高校球児の喪失感は想像に難くない。新型コロナの感染拡大で春、夏ともに甲子園が中止となった2020年。センバツ出場権を得ていた片山楽生も、目の前の現実に喪失感に襲われるも、光を灯したのは、夢を追うことの過程だった。
取材・文=鶴田成秀　写真=牛島寿人

“冬の自分”が光

　夢や目標を持つ大切さは、叶えること以上に、目指す過程にある。例年ならば、敗れ去るチームからそんな思いがにじむも、新型コロナの感染が拡大した2020年は、皮肉にも甲子園出場を決めていた勝者の胸の内が、大舞台の存在意義をより映し出した。

　20年3月19日に開幕予定だったセンバツは、8日前の11日に中止が発表。ただ、前年秋の北海道大会を制していた白樺学園のエースで四番を張った片山楽生は「薄々気が付いていたので、正式に発表されても驚きはしなかったんです。『ああ、なくなったか』って」と冷静に受け止めた。当然「そこしか見ていなかった」と目指してきた場所。それでも「嫌でも分かりましたから。今までの普通が普通ではなくなっている。練習もできない状況で(大会は)無理だろうなって」と現実を見るほかなかった。出場権を得ながら、踏めない夢舞台。そんな喪失感は“中止”の先に待っていた。

「どこに向かえばいいのだろう──」

　目指す場所なきチームは「みんな、もう引退したあとなのかなという雰囲気で」と迷走。「モチベーションがなくなったというか・・・