確実に進化を見せている今シーズン。本塁打はリーグ断トツ。打ってほしいときに豪快な1本が出る四番となった。その根底にあるのは心のゆとりと余裕。大黒柱がゆったりと打線を支えている限り、阪神の独走Vは揺るぎない。 文=今西大翔(デイリースポーツ) 写真=佐藤真一、牛島寿人、宮原和也 右翼からの風を受け、甲子園球場のバックスクリーン上の球団旗が強くたなびいている。右翼席の虎党も左からの風を受け、グラウンドへと声援を飛ばす。左打者が本塁打を放つために無視することはできない、聖地特有の浜風。幾多のアーチストが跳ね返された壁を、佐藤輝明が越えようとしている。前半戦だけで25本塁打と自己最多を更新。生え抜き選手では40年ぶりに30本塁打も達成した(8月8日ヤクルト戦=京セラドーム)。なぜ、ここまで飛躍したのか。本人の言動や行動など至る所に成長の証しがあった。
今季の開幕戦前日。藤川球児監督はキーマンを聞かれると即答した。「佐藤(輝)です。佐藤にアグレッシブな2025年シーズンを送ってもらいたい」。その言葉に呼応するようにオープニングゲームからかっ飛ばした。自身初の12球団最速1号。「開幕戦で打ちたいなと思っていた」。初回から放り込んだ一撃が、今年の快進撃の号砲となった。 プロ5年目。豪快な一発と同時に、三振も多かった。長距離砲にとって表裏一体ではあるが、課題は好不調の波を減らすこと。そのために、オフは例年と考え方を変えた。昨年までは1年間の課題をつぶそうと、上積みに特化。今年は無駄を省くようにシンプルさを追い求めた。「上積みで崩すことがあった。今年は無駄を省くというか、より洗練されたものになっているんじゃないかなと思いますね」。理想の打撃を追い求め、打撃フォームも細部までこだわった。
その一つが左肩。フラットに構えた両肩のラインからスイング時に左肩が出ないことを徹底した。「クルッと回れるようにですね。左肩が出たら、バットが遠回りするので」。打席に入る前のルーティンからも、肩への意識は見て取れる。自主トレから春季キャンプを通しては、クリケットバットでのティー打撃も取り入れた。「面を出すという感覚は出ると思います」。シーズン突入後も定期的に見慣れないクリケットバットを手にし、確実性アップにもつなげた。
開幕直前、自身の打撃の完成度について聞いたことがあった・・・
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