歯に衣着せぬ鋭い舌鋒でおなじみの里崎智也氏の見解をお届けしよう。切磋琢磨の中でともに進化を続けてきた投手と打者の間に、乖離が生まれているようだ。 解説=里崎智也 取材・構成=杉浦多夢 写真=BBM 
里崎氏が現役時代の松中[右]や和田をはじめ、かつては確実に打率3割を見込める打者が各リーグに何人も存在していた
アプローチの問題点
3割打者の減少を含めた「投高打低」について、「投手の能力が上がったから」「球速が上がったから」ということに原因を求める声がありますが、投手の能力が上がっていくのは当たり前のことです。1970年代の投手と現代の投手を比べれば、現代の投手のほうが優れているのは一目瞭然。レベルは常に右肩上がりに上昇していくもので、どの時代においてもその瞬間が歴代ナンバーワンになるわけです。
過去を振り返っても、常に史上最高のレベルの投手たちを相手に、打者は対応し、一定の結果を残し続けてきました。にもかかわらず、現在は3割打者が減少している。つまり、「投手の能力の上昇に打者がついてこられていない」ということです。「投手の球速が上がった」と言っても、140キロ台の軟投派でも打者を抑え込んでいる投手は数多くいます。ボールが速いから打てないわけではなく、やはり「投手の能力が上がったから」だけでは理由になりません。
確かに投手は自分主導で投球ができ、打者は投手に合わせなければいけないため受け身になります。進化は投手のほうが先を行き、打者は多少の時間が掛かることは確かです。進化の“いたちごっこ”は投手のほうが先を行くものですが、それでも2リーグ分立以降で3割打者がリーグから消えたことはありません。
その時代に合わせて結果を残すことがすべてである中で、現在はかつてないほど打者が投手に追いつけていないのです。3割打者どころか、規定打席到達者の数も歴史的な少なさですが、打てないのであれば代えられてしまうのもまた当然です。
もちろん打者たちは・・・
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