週刊ベースボールONLINE

今季限りで現役引退

忘れがたき名プレイヤーたちの花道

 

2013年のレギュラーシーズンが終わろうとしている。秋風吹く中、長年チームを支えた名選手たちが引退した。ここでは10月6日までに行われた引退試合、セレモニーを紹介する。忘れがたき名プレーヤーたちにふさわしい花道が華やかに飾られた。
写真=BBM

宮本慎也[ヤクルト]
多くの野球人から慕われた宮本
最後に野球の楽しさ実感




10.4 対阪神戦(神宮)
実働19年
通算成績=2162試合、2133安打、62本塁打、578打点、打率.282

 2000本目の安打を打った日と同じ、雨の神宮。宮本慎也は背番号と同じ6度、宙を舞った。

 10月4日、阪神戦(神宮)。前売り券は早くから完売し、さらには多数の野球人が宮本の引退セレモニーのために訪れた。例えばPL学園高の先輩にあたる清原和博氏、立浪和義氏、片岡篤史氏。ヤクルトOBである古田敦也氏、青木宣親(ブリュワーズ)。他球団の現役選手も、高橋由伸巨人)やサブローロッテ)らがスタンドから観戦するなど、さすがはチーム内外から慕われた「球界のキャプテン」の人柄である。

 この日は「二番・ショート」としてフル出場した宮本。もともと最後まで出る予定ではあったが、引退を惜しんだ野球の神様のいたずらか、試合は延長12回まで行われる。11回裏二死無走者で回ってきた現役最後の打席では、フルカウントから「あわやサヨナラ本塁打か」という大きな左飛を放って、場内を沸かせた。



 試合後のスピーチでは「好きで始めた野球が仕事に変わり、楽しんでプレーしたことは一度もなかった。しかし引退発表後、グラウンドでプレーすることを初めて楽しく感じられた。苦しかったことが報われ、野球の楽しさを実感することができた」と宮本は語り、19年間の現役生活に別れを告げた。

前田智徳[広島]
最後に見せたフルスイング
カープ一筋貫いた「誇り」と「感謝」




10.3 対中日戦(マツダ広島)
実働23年
通算成績=2188試合、2119安打、295本塁打、1112打点、打率.302

 マツダスタジアム広島に響く「マエダ」コールが鳴り止むことはなかった。10月3日に行われた広島・前田智徳の引退試合(対中日)。“徹夜組”も現れ、当日は今季最多の3万2217人がスタジアムへ詰めかけた。

 この日のために作成された記念ポスターでスタジアムが真っ赤に染まる中、8回二死に代打で登場。「最後は三振でもいいから、バットを振って終わりたい」との言葉どおり、中日・小熊凌祐が投じた3球目の直球をフルスイングした。結果は投ゴロに終わり、ベンチへ引き揚げる前田智へ大観衆から万雷の拍手。だが、これで終わりではなかった。

 9回、5年ぶりの守備(右翼)に就くと、再びスタジアムはフラッシュの嵐。試合後の引退セレモニーでは「この広島で、広島東洋カープで、一途に野球ができたことを誇りに思います」と感謝を述べ、最後はナインによる2度の胴上げで宙を舞った。



 1990年にドラフト4位で入団し、卓越した打撃センスは「天才」と称された。右アキレス腱断裂など、度重なるケガに苦しめられたが、不屈の闘志でそれらを乗り越え、07年には2000安打を達成した。「ファンの方、支えてくれる方がいなかったら乗り越えられなかった。ありがたい」。背番号1は、感謝の言葉を何度も繰り返し、グラウンドを去った。

山崎武司[中日]
波乱万丈の野球人生も
笑顔とジョークで「さよなら」




10.5 対DeNA戦(ナゴヤドーム)
実働25年
通算成績=2249試合、1834安打、403本塁打、1205打点、打率.257

 山崎武司らしい笑顔で、27年間の現役生活に別れを告げた。

 10月5日、今季最終戦となったDeNA戦(ナゴヤドーム)、四番・一塁で延長11回までもつれ込んだ熱戦にフル出場。3回には中前打を放ち、延長10回の現役最終打席は空振り三振だった。「疲れました(苦笑)。あらためてユニフォームを脱ぐ決心がつきました」。体力の衰えを実感したと、ジョーク交じりに振り返った。

 波瀾万丈の野球人生だった。中日から移籍したオリックス楽天で2度、戦力外通告を受けた。そして2012年に古巣へ戻り、44歳で迎えたラストシーン。ここまでに残した1834安打、403本塁打、1205打点は誇れる数字だ。

 楽天時代に東日本大震災に直面したが、「被災者の方々に生きる力、あきらめない心を教えていただいた」と振り返る。「またユニフォームを着て戻ってきたい」――。ファンに愛され続けた男は、そう言い残して長年慣れ親しんだナゴヤドームを去っていった。

桧山進次郎[阪神]
「代打の神様」笑顔で万歳
ファンに日本一を誓い惜別




10.5 対巨人戦(甲子園)
実働22年
通算成績=1959試合、1263安打、159本塁打、707打点、打率.260

「代打の神様」で阪神生え抜き選手だった、桧山進次郎の最後の姿を目に焼き付けようと、10月5日の巨人戦(桧山は五番・右翼で先発も4打数0安打)、桧山の引退セレモニーに今季最多の4万7056人が甲子園に集まった。「良いときも、悪いときも温かい声援をくださった阪神ファンの皆さん。代打桧山をコールされたとき、地響きが起こるような声援に、どれだけ勇気づけられたことか。一生忘れません」

 2006年から代打での出場が多くなった。1試合に1打席あるかないかという日々の中で集中力を極限にまで高め、代打通算本塁打、代打通算打点の球団記録を更新していった。その勝負強さから「代打の神様」と言われた。

 セレモニー後は8度宙に舞った後、ファンへあいさつの球場1周。さらにファンとともに万歳をもう1周した。「まだ日本一の称号を手に入れていません。その忘れ物をいつか必ず取りにいきます」ともう一度甲子園で帰ってくることを誓い、笑顔で別れを告げた。

今季限りで現役引退
忘れがたき名プレーヤーたちの花道
引退表明選手一覧
※実働、成績はNPBのみ 10月5日現在

巨人/実働15年/内野手
古城茂幸
767試合、264安打、9本塁打、88打点、打率.225
10月2日に引退会見。「野球界に恩返しできるように将来は指導者に。僕みたいな選手を応援してくれた人たちに、感謝の気持ちでいっぱい」

▲古城茂幸



ヤクルト/実働13年/内野手
藤本敦士
1001試合、619安打、14本塁打、208打点、打率.251
9月21日に古巣・甲子園で通算1000試合を達成して花道。阪神ファンからの大きな拍手で「ぐっと来た。これで甲子園は最後です。ありがたかった」と涙。

▲藤本敦士



広島/実働17年/投手
菊地原毅
474試合、15勝26敗3S107H、防4.51
05年の最優秀中継ぎ。10月2日の試合後に引退セレモニー。「つなぐという意識を持ってやってきた。まさかここまで現役をやれるとは。感謝しています」

▲菊地原毅(左は菊池涼介



DeNA/実働16年/投手
篠原貴行
496試合、33勝19敗17S61H、防3.28
99年ダイエー日本一に貢献。9月29日に引退表明。「ファンの皆さんに支えられた野球人生だった。寂しい気持ちもあるが、16年もプレーできたのは良かった」

DeNA/実働13年/外野手
小池正晃
809試合、412安打、53本塁打、186打点、打率.242
10月1日引退発表し3日に引退会見。「どこまでファンの人たちが応援してくれるのかと思ったが、本当に大きな声援があって(横浜に)戻ってきて良かったです」

西武/実働18年/投手
石井一久
419試合、143勝103敗1S4H、防3.63
22年のキャリアで日米通算182勝(メジャー4年間で39勝)。「今でもやれる気持ちもあるが、そこに向かうまでの準備に少し疲れた」。10月8日にセレモニー。

西武/実働16年/外野手
嶋重宣
1034試合、868安打、126本塁打、421打点、打率.279
04年にセ・リーグ首位打者、最多安打を獲得。10月3日に引退会見、「8月に打撃好調も一軍に呼ばれず、戦力になれないのならユニフォームを脱ぐしかない」

ソフトバンク/実働11年/投手
斉藤和巳
150試合、79勝23敗0S0H、防3.33
沢村賞2度など。9月28日引退セレモニー。「幸せなことに野球をやりたいと思わない日々が続いています。そこまでやらせてくれて、ありがとうございました」

▲斉藤和巳



ロッテ/実働15年/投手
薮田安彦
520試合、48勝72敗67S112H、防3.81
メジャーでも3勝を挙げた。10月6日引退セレモニー。「最高のチームメートに出会えて本当に幸せな野球人生でした。一番の思い出はやっぱり05年の優勝です」

ロッテ/実働16年/投手
小野晋吾
293試合、85勝77敗0S10H、防3.68
00年最高勝率。10月6日引退セレモニー。「マリーンズファンの後押しは非常に力になりました。ファンの前で投げられたことが自分にとって喜び、誇りです」

▲薮田安彦(左)、小野晋吾

HOT TOPICS

HOT TOPICS

球界の気になる動きを週刊ベースボール編集部がピックアップ。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング