File.1 東北楽天ゴールデンイーグルス ▲次戦の登板に向けて倉敷で調整に励む松井裕。開幕に向けてゴールデンルーキーの猛アピールの日々は続く
写真=前島進 ゴールデンルーキーの勢いが止まらない!松井裕樹が開幕先発ローテ入りに当確ランプ もはや先発ローテ入りだけでなく、堂々の開幕投手候補にも名乗りを上げる圧巻のピッチングだった。楽天のドラフト1位ルーキー・松井裕樹が3月5日の
ロッテとのオープン戦(倉敷)で2度目の実戦登板。卒業式やNPBの新人講習会などで3日間チームを離れていたが、調整面の不安もなく、5回4安打無失点(6奪三振)の快投で指揮官をうならせた。
圧巻だったのは4回。二死一、三塁の実戦初のピンチの場面。そこでも若き左腕は落ち着いていた。バッターの細谷に対して「打ち気にきていましたし、タイミングも外れていたので」と冷静に相手を分析。
宝刀スライダーでなく、外角に逃げる3球連続のチェンジアップ勝負で空振り三振。変化球を決め球に右バッターを9人配置したロッテ打線を翻ろうし、前回の登板から7イニング連続でスコアボードに0を並べた。
この投球には
星野仙一監督も「今日の内容なら則本の次。(開幕投手の候補?)選択肢の中には入っているよ」と絶賛。キャンプ序盤ではピッチングフォームの修正や制球難が懸念されていたが、そんなことはどこ吹く風とばかりに実戦を重ねるごとに才能を見せ始めている。
それでも本人は「(開幕投手に関して)まだ自分はそんなレベルではないですし、1試合1試合アピールしていくだけ。とにかくケガだけに気を付けていきたい」と冷静に目の前の課題を一歩ずつクリアしていくことだけを見据えている。
開幕までに残された実戦は残り2試合。「0に抑えられている以上は、いいアピールができているということ。次も続けていきたい」と抱負を語った松井裕。周囲の高まる期待を一身に受け、注目度NO・1左腕がさらにそのギアを上げていく。
File.2 藤浪晋太郎(阪神タイガース)・大谷翔平(北海道日本ハムファイターズ) ▲2回は3者三振に仕留めるなど、力を見せた藤浪だったが、9安打を浴びて5失点
▲変化球を多投した大谷。四球から失点したものの、被安打2と上々の内容だった
写真=佐藤真一 12年センバツ以来の投げ合いは大谷が制す オープン戦とは言え、プロ入り後初めて大谷翔平対藤浪晋太郎の投げ合いが実現した。
舞台は2年前と同じ甲子園。3年生になる直前、2012年3月21日の選抜1回戦で大阪桐蔭(大阪)と花巻東(岩手)のエースとして投げ合って以来だ。そのときは藤浪の大阪桐蔭が9対2で大谷の花巻東に勝利している。
今回は大谷の日本ハムに軍配が上がった。初回は鳥谷を156キロの直球で空振り三振に仕留めるなど、三者凡退。2回は先頭の
マートンに中前打を許すも、続く新井貴を併殺打、福留も二ゴロに打ち取り、3人で終える。
3回は2三振を含む三者凡退。4回は振り逃げの走者を出しただけ。5回に一死から四球を出し、新井良の右前打で一、三塁とされ、坂の二ゴロの間に1失点。しかし、続く代打の伊藤隼を二ゴロに打ち取り、マウンドを降りた。
「楽しかったですし、投げやすかった。変化球で三振を取れたことは収穫だと思います。今日の登板でいままでよりは自信が持てましたが、まだまだ勝負しないといけないので、頑張ります」
キャンプ中から期待の大きさもあり、大谷の投球に対して厳しいコメントを繰り返してきた栗山監督も、「こういう2人が日本球界を盛り上げる大エースになってほしい。この時代に野球をやれている幸せを感じている」と満足げだった。
一方、2回まで計4奪三振と上々の立ち上がりだった藤浪は、日本ハムの足を絡めた攻撃に失点を重ねた。3回は二盗されたあとに適時打で失点するパターンで2失点。4回は抑えたが、5回に中島、陽の連打のあと、犠打で一死二、三塁となり、西川に右前打で2失点。中田を打ち取ったあと、稲葉に左中間適時打を浴びて5点目を失った。
「3回以降はズルズルズルズル、よくない投球を続けてしまった。自分のボールをしっかり投げるのが大事。悪いなりの投球をしないといけない」と藤浪は反省。
ともに今季も先発の一角として期待され、自覚も芽生えてきた若き右腕。藤浪はここまで順調だっただけに、3盗塁を許し、そのうち2つを点に結び付けられたのが課題か。大谷は今季ベストの投球を見せた。実戦での打撃でも16打数10安打3打点(3月8日時点)と好調を維持。二刀流2年目はさらに進化しそうだ。
File.3 横浜DeNAベイスターズ ▲開幕投手の大本命と目される三嶋一輝だが、「(投球を)一から見つめ直したい」と調子は黄信号
写真=桜井ひとし、高塩隆 今年も激しく「打高投低」!?プロ2年目三嶋&井納が本拠地で大乱調 今季キャンプ終了時、
中畑清監督は「投手陣には90点あげられる」と高い評価をつけた。実際、沖縄、ビジター球場を回っていた3月4日までのオープン戦成績は4勝1敗。今季より先発転向の
加賀繁や、
三浦大輔、
久保康友、尚成のベテラン3人らが結果を残し、指揮官は「今年は違うっていう手応えがある」と語った。
しかし、本拠地でありながら投手陣にとって“鬼門”(2013年チーム防御率/ホーム5.08、ビジター3.89)でもある横浜スタジアムに戻るとにわかに暗雲が立ち込めた。
3月7日の
ソフトバンク戦に先発した三嶋一輝が柳田に3ランを浴びるなど4回5失点。前回登板の2月27日の韓国・ネクセン戦(宜野湾)でも3回6失点で、2試合連続の乱調に「情けない」と肩を落とした。翌8日の
西武戦では
井納翔一が先発も、四球直後に本塁打を打たれるなど4回9失点とこちらも絶不調。ともにプロ2年目で、飛躍が期待されているが、不安が残る結果だった。
一方、野手陣は順調。昨季大スランプの
筒香嘉智は、8日の試合では3本の二塁打をマーク。不調の
バルディリスに代わり五番を任されそうだ。
白崎浩之は2試合連続アーチ、故障離脱の
荒波翔に代わる中堅手と目される
松本啓二朗も攻守にアピールするなど、若手が活発だ。
▲オープン戦絶好調の筒香嘉智。今季より外野にコンバートし「左翼のレギュラーを取りたい」と意欲を見せている
昨年同様、打高投低の戦いが予想されるチーム状況だ。とは言え、まだオープン戦。中畑監督は三嶋に対し「次はスッキリした投球を見せてくれるでしょう」と開幕投手抜てきの方針を明言。
9日のソフトバンク戦(横浜)で先発の久保が4回無四球無失点や、新人の
平田真吾、
三上朋也が好投するなどプラス要素もある。少しでも投打の差を縮め、「90点」の状態で開幕を迎えたいところだ。