週刊ベースボールONLINE


 

第1回 閉ざされた野球への道、女子だって野球がしたい!

女子といえどプレイヤー数、ボール、塁間の距離も男子と同基準


日本は男子だけではなく女子も野球熱が高く、そして強い。侍ジャパン女子代表(マドンナジャパン)は9月1日から開催されるワールドカップで4連覇を狙う。そんなマドンナジャパンの中核を担うのが女子のプロ野球選手たちだ。プロリーグ創設から4年。試行錯誤を続けながら、現在まで歩みを続けてきた女子プロ野球の世界を3回に渡って追う。
取材・文・写真=赤見千尋

元巨人・辻内氏「女子プロ野球はこれから広がっていく世界」


 辻内崇伸、26歳。この名前を覚えている野球ファンは多いのではないだろうか。“怪物”と呼ばれジャイアンツにドラフト1位で入団したけれど、度重なるケガにより、昨年8年間のプロ生活にピリオドを打った。そんな辻内が第二の人生に選んだのは、意外にも女子プロ野球チーム(アストライア)のコーチ就任だった。

「女子プロ野球は、これからどんどん広がって行く世界だと思うんです。いろいろお話をいただいた中で、嫁とも話し合った結果、女子プロ野球に何か貢献できないかと、コーチのお話を受けることにしました」

昨年、現役を退いた辻内氏。現在は女子プロ野球のコーチとして指導にあたっている



 女子プロ野球――。男子野球とは違い、まだまだメジャーなスポーツとは言えない。女子の野球とは、プロリーグとは、一体どんなものなのだろうか。

 ルールは単純である。金属バットを使用すること以外は、人数もボールも塁間の距離も、すべて男子プロと同じ。女子野球と言っても、ルールに差はないのだ。では、男子野球との違いは何なのだろうか。その違いを一番に感じているであろう、辻内コーチに聞いてみた。

「男子とはやはり、体力面が大きく違いますね。投球スピードも、まだ130キロを投げる投手はいないんです。あとは、男子プロは野球することのみが仕事ですけど、それはそれでしんどい面もありますけど、女子野球の場合は午前中に練習して、午後から営業やデスクワークをするので、そういう面はかなり大変だと思いますよ」

 現在の女子プロ野球は、関東2チーム(アストライア、レイア)、関西2チーム(フローラ、ディオーネ)の4チームで構成されている。公式戦は、関東のチーム同士、関西のチーム同士が常に試合を行い、その勝者同士で女王決定戦が行われるヴィクトリアシリーズと、年2回4チームが集結して戦うティアラカップの2つ。

 各チームは13名〜14名で構成されており、選手全員が、株式会社わかさ生活の社員なのである。平日は、午前はチームごとに練習に励み、午後になると5つのグループに分かれて業務(野球教室・広報活動・小中学校訪問・営業・地域とのつながりなど)をこなす。そして、土日になるとプロ野球選手として試合に挑むのだ。

 プロ野球選手といえど、野球にだけ取り組めばいいというわけではない。しかし、彼女たちにとって大切なのは、“野球を続けられる”という環境なのだ。

「男子とは違って、女子はこれまで野球を続けて行く地盤がなかったですから、一度は夢をあきらめた子たちが多いんです。野球ができる喜びというのをプレーから感じますね。一生懸命さ、ひたむきさというのは、女子野球の魅力の一つです」

 女子公式戦を見に行くと、あちこちに彼女たちの想いを感じることができる。ポスターやポジション紹介のポップなどは、選手たちが手作りで作成している。試合終了後には、選手自らがグッズを販売し、ファンと談笑している場面も多い。

選手はプレーだけでなく、販売ブースでグッズを手売りしてファン獲得に努めている



 彼女たちからは、野球を続けられる喜びと、もっと女子野球をメジャーにしたいという想いがあふれている。なぜここまでひたむきになれるのか。その答えは、やはりこれまでの女子野球の厳しい環境にあるだろう。

試合終了後、勝利チームは“勝利のダンス”でファンとともに喜びを分かち合う場面も

HOT TOPICS

HOT TOPICS

球界の気になる動きを週刊ベースボール編集部がピックアップ。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング