週刊ベースボールONLINE

球界インサイドレポート

再開後大苦戦…ジャイアンツは大丈夫?

 

 前半戦終了時点での貯金は14、2位・阪神とは3.5ゲーム差をつけて首位ターンに成功した巨人だったが、7月21日の後半戦スタート後は大苦戦。8月12日からの阪神(2位)、広島(3位)との6連戦を前に、6カード中3カードで負け越しと最小で0.5ゲーム差と肉薄された。首位陥落の危機もあった上位陣直接対決は3勝3敗と粘りを見せたが、リーグ2連覇中の王者の現状は? チームの今をリポートしつつ、佳境を迎える終盤戦を展望する。
写真=前島進、BBM

先発陣は不安定


 8月4日、首位を走るチームに衝撃が走った。プロ2年目の今季は、初めて開幕投手を務め、先発ローテーションの柱として大車輪の活躍を見せていた菅野智之が、出場選手登録を抹消された。この日、東京都内の病院で検査を受けた結果、「右手中指の腱の炎症」と診断されたためだ。

▲右手中指の腱の炎症で二軍調整中の菅野。チーム勝ち頭の早期復帰が待たれている



 発端は前半戦最後の登板となった7月16日のヤクルト戦(東京ドーム)。5回の自身の打席で二ゴロを放った際に患部にしびれが走った。その後、19日のオールスター第2戦(甲子園)の登板も含めて3試合でマウンドに立ち、最後の登板となった8月1日の広島戦(東京ドーム)では、相手エース・前田健太と投げ合い、6回6安打2失点とまずまずの投球。しかし、2週間が経過しても痛みが引かなかったため、大事をとって入団2年目で初めて、登録を抹消されることになった。

 今季は手薄な先発陣で中5日の登板も多かったが、ここまでチーム最多の9勝を挙げるなど、昨年から大きく飛躍する活躍で先発陣を引っ張ってきただけに、痛い離脱に。重症ではないが、しばらく右手中指の腫れが引かず、登録抹消から9日間はノースローで様子を見た。

「いい方向に向かっている。投げられるようになって、第1段階をクリアしたけれど、大変なのはこれから。抹消される前よりもいい状態で戻れるようにしたい」と14日にようやくキャッチボールを再開し、8月中の戦列復帰を目指しているが、繊細なコントロールを操る指のケガだけに、今後の回復具合が心配される。

 その菅野を中心に、杉内俊哉大竹寛らで中5日のローテーションを基本線に回してきた先発だが、リーグ連覇を達成した2012、13年と比べると、コマ不足の感は否めない。エース・内海哲也の復調に時間がかかり、澤村拓一宮國椋丞にチャンスが与えられたものの、結果を残すことができずに、二軍へ逆戻り。菅野の穴を埋めるべく一軍再昇格のセドンは2連勝しているが、信頼を得るには、まだ時間がかかりそう。交流戦から一軍に上がってきた4年目の小山雄輝が期待の存在となってはいるが、菅野の状態も含めて、首脳陣は終盤戦までやりくりに頭を悩ませそうだ。

 一方で、不安定な先発陣を救ってきたのが、フル回転しているリリーフ陣だ。鉄腕・山口鉄也の存在感は相変わらず。昨年は手術明けで一軍登板のなかった久保裕也香月良太、さらに若手の田原誠次がセットアッパーとして台頭。田原は原辰徳監督も「自分を疑うことなく、投げ抜いている。疑わない気持ちというのが、彼の強さ」と褒めちぎるほどの信頼を勝ち取り、勝ち試合でも起用されるようになった。シーズン途中からクローザー指名されたマシソンは苦しみながらも、すでに20セーブに到達。首位の座を守り続けているのは、縁の下の力持ちともいえる、リリーフの存在を抜きには語れない。

▲8月15日、雨中の3位・広島戦[マツダ広島]で、エース・内海が3勝目。握手を求める原監督も安堵の表情



打順固定で打線上向き


 開幕直後、打線はまずまず活発だった。特に4月に活躍したのは、新加入のアンダーソンと高卒5年目を迎えた橋本到の2人。だが、本来の主力といえる阿部慎之助村田修一長野久義の調子が夏場に入っても上がらず、原監督も頭を悩ます日々が続いた。後半戦に入ってからは顕著で、7月下旬は毎日、打順の変更を繰り返す、「日替わりオーダー」となった。100試合に到達した14日の時点で、何と76通りの打線を組んだ。

 その中で、指揮官が導き出した1つの答えが、阿部の四番固定だった。原監督自身も現役時代は四番を任されていただけに、その重要性は熟知しているが、“柱”が決まらずに、苦しんでいた。村田、阿部、アンダーソン、セペダ、高橋由伸、そして長野もオールスター後に四番で起用してみたが、どれもはまらない。そして、行き着いたのが、攻守の柱となるべき、阿部だった。

▲当面の一塁起用で負担の軽減された阿部のバットが好調。四番の復調で打線全体が上向きつつある



 8月1日の広島戦から四番に固定し、打撃に集中させるために、7日のDeNA戦(横浜)からは、本職の捕手ではなく、一塁で起用した。慣れない一塁守備に、最初はミスも出たが、名手・ロペスに指導を仰ぎ、正確な送球が持ち味の村田には、練習で絶妙なワンバウンド送球をしてもらい、捕球練習を繰り返した。守備が安定し始めると、打撃の調子が上がるのは不思議なもの。3、4月から月間打率はすべて2割台だったのが、8月は打率.320(16日現在)と右肩上がり。「いい集中力で打席に入れている」と早くも3本塁打と復調の気配を見せている。

 3〜7日に4連敗を喫するなど、苦しんだ8月。打線を活気づけたのが、高橋由と井端弘和の“同級生コンビ”だった。前半戦はともに代打と守備固めとワキ役の存在だったが、チームが苦しいときに頼りになるのは、やはりベテランの存在なのだ。

 交流戦から打線の中核を担っていた亀井善行が8日に左太ももの肉離れで出場選手登録を抹消されると、高橋由が先発メンバーに名を連ねるようになった。今季は、一振りにかける代打として、結果を残し続け、すでに柳田俊郎氏が1976年に記録した球団記録の代打で18打点に「あと1」まで迫っているが、先発起用されても力を発揮している。15日の広島戦(マツダ広島)では、相手エース・前田からも力強い打球で、右越えに5号ソロ本塁打を放った。

 井端も、不調で二軍再調整が命じられた片岡治大に取って代わり、8月7日のDeNA戦から先発メンバーに定着。打率こそ2割台中盤だが、勝負どころの集中力、持ち前の右打ち、堅実な守備で、チームを支えている。中日から移籍1年目だが、ベンチでも各選手にアドバイスを送るなど、もはや巨人には欠かせない存在となっている。

 原監督の選手起用にも少しずつ、変化が見られる。捕手に新人の小林誠司實松一成を併用するなど多少の変更はまだあるが、一番・長野、三番・坂本勇人、四番・阿部、そして相手投手の左右で五、六番に高橋由と村田。かつて「枢軸」と呼んだ男たちの役割は明確になり始めた。作戦面では、これまで同様、どんな選手にも状況に応じてエンドラン、バントのサインが出るのは変わらないが、打順が安定することで、打線の状態も上向きとなっている。

戦力の充実は、まだ…


 打線がようやく好転し始め、リーグ3連覇がかかる終盤戦に向けて、大事になるのが二軍で調整している選手たちの台頭だ。交流戦MVPに輝き、主に三番として元気のない打線を引っ張っていた亀井は、8月7日のDeNA戦で走塁中に左太ももの肉離れを発症した。症状は軽度と見られ、2〜3週間での復帰を目指し、12日の練習からリハビリを開始した。アンダーソンは利き手の左ヒジの関節炎で8月8日に出場選手登録を抹消された。こちらもティー打撃を再開するなど、早期の復帰を目指している。故障者は、患部の痛みが消え、リハビリが完了すれば、復帰のメドが立つ。心配されるのが、不調で二軍に落ちた選手たちだ。

 昨オフにFA権を行使して、西武から加入した片岡は、85試合で打率.239、4本塁打、24打点。7月に入ってからは、不振ぶりが目立つようになり、8月6日に出場選手登録を抹消された。「ちょっと(本来の打撃を)見失っているように感じる。自分のスタイルに戻るための時間を与えた」と原監督が決断した。先発で期待されていた、澤村、宮國も一軍で結果を残すことができずに、二軍で調整中。彼らが、心身ともにリフレッシュして一軍に戻ってくれば、戦力に厚みは増していく。

 投打に充実した戦力と緻密な攻撃で、リーグ連覇を達成した巨人が、今季は終盤戦でどのような戦いぶりを見せるのか。過去2シーズンとは比べものにならないほど苦しんだ14年の集大成を披露するのが、9月の戦いとなる。
HOT TOPICS

HOT TOPICS

球界の気になる動きを週刊ベースボール編集部がピックアップ。

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング