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秋の大阪府大会コールド負けから夏王者まで上り詰めた大阪桐蔭ナイン。敗退後、「練習量は全国No.1」を自負する厳しい練習で、粘りのチームを築き上げた


文=岡本朋祐 写真=早浪章弘、太田裕史、田中慎一郎

大阪桐蔭 総合力の高さで全国3971校の頂点に!


 1924年8月1日の完成から90周年を迎えた阪神甲子園球場で、地元・大阪桐蔭が夏王者に上り詰めた。全国3917チームの頂点に立ち、2年ぶり4度目の深紅の大旗を手にした。

 59年ぶりの県勢制覇を目指した三重との決勝(8月25日)は、序盤は三重ペースも、2対3で迎えた7回、大阪桐蔭が三重の左腕・今井重太朗(3年)から2点を奪って逆転に成功。投げては先発のエース・福島孝輔(3年)が11安打を許しながらも要所を締める力投で9回を投げ抜き、勝利を手繰り寄せた。

決勝の7回、1点を追う大阪桐蔭は二死満塁から主将の一番・中村が、詰まりながらもしぶとく中前へ。粘りの一打で逆転に成功した



 全国制覇へ導いた西谷浩一監督は「相手を圧倒する力はないが、粘りに粘って、何とか粘り勝ててうれしい」と喜びを口にした。昨秋は府大会4回戦(対履正社)で5回コールド敗退。屈辱の敗戦からはい上がり、大阪では桑田真澄清原和博による“KKコンビ”がいたPL学園以来(83〜85年)となる夏3年連続出場。そして、全国の舞台で栄冠を手にした。大阪桐蔭は初出場初優勝の91年夏、08年夏、12年には藤浪晋太郎(現阪神)を擁し史上7校目の春夏連覇を成し遂げており、平成以降で全国最多5度の優勝とまさしく、高校野球界のけん引役だ。

 準優勝の三重は、最近10年で春夏通じ7回出場の常連だが、甲子園では結果が出ていなかった。昨秋は東海大会優勝もセンバツは初戦敗退。甲子園直後、4月に就任した中村好治監督は意識改革を敢行した。三重中京大(12年限りで閉校)の監督時代は、昨季のパ・リーグ新人王の楽天則本昂大を指導。今井のフォーム修正に着手し、守備と打撃の練習時間の割合を逆転させ、「7:3」でディフェンスを重視した。フリー打撃でも球審をつけ、ストライクとボールの見極めを徹底。甲子園で勝てるチームをわずか4カ月で仕上げてきたのは、卓越した指導力に尽きる。

三重のエース・今井は決勝も先発。強力・大阪桐蔭打線を6回まで2失点と抑えていたが、7回に逆転を許してマウンドを仲間に託した



 敦賀気比の打線もインパクト十分だった。1回戦から準決勝まで5試合連続2ケタ安打。58得点、7本塁打、チーム打率.418と活発で、超高校級の弾道の連続で聖地を沸かせた。福井勢初の決勝進出は逃したものの、全5試合に先発した2年生・平沼翔太が残る来年も楽しみだ。

 敦賀気比とともに北信越勢として4強に残った日本文理(新潟)も、準優勝を遂げた09年夏に匹敵する伝統の「つなぎの打線」が機能。プロ注目右腕・飯塚悟史は1回戦から準決勝まで、全5試合を一人で投げる不屈の精神力を見せた。このほか、北信越勢は富山商が左腕・森田駿哉の活躍で2勝を挙げ3回戦進出。岩下大輝を擁する星稜(石川)も2勝、佐久長聖(長野)も初戦突破し、全5校が勝ったのは1県1代表制が定着した78年以降で初めてだった。

2校の北信越勢がベスト4まで進出。敦賀気比は打線のパワーアップで昨春と同じ戦績を残した。写真は敗れた準決勝の大阪桐蔭戦で2本塁打の御簗翔



日本文理も健在の粘り強さでベスト4。写真はサヨナラ勝ちで勝利した3回戦の富山商戦



 8強の健大高崎は4試合で26盗塁。大会記録にあと3個及ばなかったが、モットーとする“機動破壊”を存分に発揮。個人では平山敦規が1大会8盗塁のタイ記録を樹立した。

健大高崎は機動力野球で展開を打破し、ベスト8進出。写真は4試合で大会タイ記録の8盗塁をマークした平山



 なお、東海大四(南北海道)の右腕・西嶋亮太の超スローボールが、ツイッター上で論争となるなど話題性ではトップ。「投球術」としての意見が大半も一方では勝負という観点から逸脱しているとの声も。今後も出現してくるようなことがあれば、難しい対応を迫られるかもしれない。

東海大四の主戦・西嶋はスローボールを組み込みながら、抜群の制球力で強豪に対峙した

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