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秋季練習リポート

楽天・大久保博元監督 実戦で課題を明確に

 

日本一を懸けた争いが行われている裏で、来季の覇権奪回を目指して、その他のチームはすでに練習を再開。特に新監督就任が発表された広島楽天ヤクルト西武は指揮官の指導にも熱が入る。果たして、どのような方法で巻き返しを図るのか。この4チームの秋季練習リポートをお届けする。

個々が図るレベルアップ


▲豊富な指導経験をチームのために生かすことを誓う大久保監督[写真=高塩隆]



 監督不在でスタートしたコボスタ宮城での秋季練習は、2日目を迎えていた。円陣の中心には、新しい指揮官の姿があった。10月15日、前日に就任が発表されたばかりの大久保博元新監督がコボスタ宮城での秋季練習に合流した。

「もう一度、日本一のユニフォームにするよう、個々が課題を明確にしてやっていこう」

 選手、コーチ、スタッフら約60人の前に立ち、覇権奪回への強い思いを伝えた。

 1年前の同じ時期、日本一に向けた戦いのまっただ中にいた。それが一転して最下位に沈み、再出発への日々が始まった。屈辱のシーズンを終えた直後、藤田一也は「昨年が、あまりに充実していたので、今年は(シーズン終了の)実感がないです。今年の成績は僕ら選手の責任でもあるので悔しい気持ちです」と空を見上げた。自分たちのほかに、まだ戦いを続けているチームがある。それを思えば、虚しい気持ちも込み上げるが、選手会長は「来季は優勝争いができるようにしっかり準備したい」と気持ちを切り替え、前を向いた。

 来季を戦っていくための下地を作っていくことが、秋季練習の目的となる。この時期、いくら周りが奮い立たせたところで選手が一体となって来季に向かっていくことは難しい。重要なのは個々のレベルアップ。嶋基宏は「今年はチームにも自分にもスキがあった。一人ひとりの意識が大事だと思う」と言う。個々がレベルアップを図った上で生まれるのが「競争」。今のチームに足りないものだ。大久保監督は「競争なくしてチームは強くならない。自分が試合に出られるのか、そういう怖さやストレスがないと成長していかない」と説く。欠如していた競争を生み出すことで、チーム再建の第一歩を踏み出そうとしている。

実戦を意識した練習に力を入れる


 練習スタイルにも変化があった。18日の第2クールから、大久保監督が打撃コーチ、二軍監督時代に導入していたアーリーワークが復活した。「全体練習のときは気持ちよく打ちたいだろうし、打撃に課題がある選手はこちらで指名してやっていく」と指揮官。藤田ら30歳を超えた選手も例外なく行っていくという。当初に予定されていた休養日もなくし、自主練習など軽めの練習日に切り替わった。「1日完全に休むと、また体を動かすのに時間がかかる」というのが理由だ。今までと同じことをやっても成長は見込めない。二軍監督時代にやってきたことを取り入れることは、刺激をあおることにもなる。

 個々のレベルアップを目的とする中で、試合を意識した練習も取り入れている。秋季練習4日目には、報道陣や観客をシャットアウトした非公開形式で新しいサインプレーの練習を行った。指揮官は「試合に勝つためには試合みたいなことをやっていかないといけないから」と狙いを明かした。みやざきフェニックス・リーグに参加している若手も合流する倉敷秋季キャンプでは紅白戦も取り入れる方針。実戦だからこそ分かる課題もある。いま秋季練習に参加する一軍クラスを含め、若いチームだからこそ、常に実戦意識を植え付けることが重要だと考えている。

 大久保監督が求める野球は、機動力から生み出す攻撃力、そして守備力にある。「スランプのある打力に頼っちゃダメ」。今季、星野前監督の休養により、監督代行を務めた17試合で16盗塁を成功させた。

「星野監督の『闘志なき者は去れ』の思いの中で3年間やってきた。星野監督の野球を引き継いで、みんなで戦う。優勝は当然だが、常勝軍団をつくっていきたい。そのためにはスランプのない守備、走塁をしっかりしていく。われわれの上に一つでもほかのチームを置いてはならない。必ず一番上に立つよう、選手とともに戦いたい」

 監督としての契約は1年。チーム再建に与えられた時間は少ない。星野前監督が4年かけて築き上げたものに、デーブ野球をいかに融合させられるか。それが、再びチームが輝きを取り戻すカギとなる。

▲日本一奪回のため、選手たちも生き生きと練習をしている(写真は則本)[写真=高塩隆]

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