週刊ベースボールONLINE

“プレミア12” 初制覇への戦い

武田翔太 初登板で浮き彫りとなった課題

 

昨秋の日米野球には左ワキ腹痛で辞退した小川泰弘(ヤクルト)の代役として追加招集された。若手主体の選出となった今春の欧州代表との強化試合では第2戦にリリーフ登板し、2イニングをパーフェクトに抑えた。チームでも未来のエースと期待される22歳の好素材。しかし、15年のシーズン初登板は課題が浮き彫りとなるものだった。

 ソフトバンク投手陣の未来を背負って立つ存在として期待される若武者にとって、2015年の初登板はホロ苦いものになった。開幕第5戦の4月1日、オリックス戦(ヤフオクドーム)に先発。5回までは2失点で粘ったが、6回、四番・中島裕之のソロ本塁打で1点差に詰め寄られると、二死から4連打を浴び、みすみす敗戦投手に。6回途中7失点、屈辱のKOだった。

球数が100球に近づいた6回、オリックス打線に突如つかまった[写真=湯浅芳昭]



「1年間、(先発)ローテーションを守りたい」という目標を掲げて挑む今シーズンを前に、取り組んだのはストレートの威力の向上だった。キャンプ中の2度の紅白戦に練習試合、3月に入ってのオープン戦まで4度の実戦で立て続けに失点。しかし、直球にこだわる姿勢は貫いた。2回3失点した3月3日の阪神とのオープン戦(丸亀)でも「真っすぐは良かった。あとは変化球の微調整」と納得の表情。当初、開幕先発ローテーション入りが確実視されていたバンデンハーク松坂大輔の離脱を受け、5番手に“繰り上げ当選”し、自身の開幕を迎えた。

 昨年の日本シリーズで猛虎打線を機能不全に陥らせた独特な軌道を描くカーブが決まらなかった。制球が安定せず、本来のタテ変化ではなく、横に流れた。工藤公康監督は「ブルペンからよくなかったみたいだけど、使わないと苦しくなる」と指摘。序盤、140キロ台半ばの直球には力があったが、130キロ台のスライダーとのコンビネーションだけでは三振を1つ奪うのがやっと。「追い込んでから三振を取れなかった」。9安打中6本が2ストライク後と、決め球に苦心した。

 工藤監督の親心も裏切った。6回二死から小谷野栄一坂口智隆の連打で二、三塁とされ、一打逆転のピンチを招くも、「乗り越えれば、彼にとって見つかるものがある」と名誉挽回の機会を与えられた。しかし、八番・安達了一にインコースの直球を中堅右に弾き返され、決勝点を献上。110球目、スタミナは限界を超え、こだわった直球は威力を欠いていた。

「逆転していただいたのにしっかりと投げ切れませんでした」。初回に許した先制点は「それぞれの開幕。仕方ない」と工藤監督も認める部分。しかし、2、3回に4点を奪い逆転してくれた味方打線に報いることができなかったのが反省だ。伝家の宝刀が抜けないときの対処とスタミナの獲得。2つの課題を乗り越えた先に、王者・ソフトバンクの、そして侍ジャパンの先発の座が見える。

今春の侍ジャパンでの欧州代表戦や昨年の日本シリーズなど、大舞台に動じないメンタルは武田の最大の武器[写真/小山真司]



PROFILE
たけだ・しょうた●1993年4月3日生まれ。宮崎県出身。186cm85kg。右投右打。宮崎日大高から12年、ドラフト1位でソフトバンク入団。1年目は7月に一軍に昇格すると、8勝を挙げてブレーク。しかし、13年は右肩の筋疲労の影響もあり、4勝止まり。14年もシーズンは3勝にとどまったものの、阪神との日本シリーズ第2戦の先発に抜てきされ、7回1失点と好投した。14年日米野球、15年欧州代表戦代表。
HOT TOPICS

HOT TOPICS

球界の気になる動きを週刊ベースボール編集部がピックアップ。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング