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地元でパンとベーグルの店を営む元近鉄・川口憲史の第二の人生

 

豪快にバットを振り続けた現役時代。近鉄“いてまえ打線”の一員として成し遂げた2001年のパ・リーグ制覇は最高の思い出だ。その後、球界再編で楽天へと移り、10年限りで16年の現役生活を終えた。そして12年に地元・福岡にパンandベーグル「hands hands」を開店。同店のオーナーとして第二の人生を送っている。
取材・文=菊池仁志、写真=BBM

妻と二人三脚でパン&ベーグル店を営む


 第二の人生としてパンとベーグルの専門店を開いた川口憲史の朝は早い。

「たくさん作る日だと2時、3時から作り始めます。現役時代はナイター終わりでご飯を食べに行ったら、そのくらいの時間はまだ飲んでいる最中。まったく逆になってしまいましたね」

 任されるのはパン、ベーグルに使う生地作り。湿度や温度によって材料の配合を調整する繊細な作業を行う。

「パン作りは見習い中なんで(笑)、パンにはまだ触らせてもらえないんですが、その生地作りが朝の仕事ですね。決まった分量でやっても日によって仕上がりが違うんです。その違いがやっと分かってきました。バットと一緒だなって。バットも湿度が高いと膨張しますから」

 そして、出来上がった生地を使って商品を焼き上げるのが川口の妻で店長の道子さん。2人の地元・福岡で、二人三脚でパン&ベーグル「hands hands」を営んでいる。



 オープンは2012年。場所は福岡県福岡市の西の端。福岡市と糸島市を結ぶ今宿バイパス202号線から1本入った細い路地に目立たないように立つ。

「辺鄙なところです。2人でやるつもりだったので、大きい道路沿いに出して、変に忙しくなったら大変じゃないですか(笑)。ゆっくりのんびり、食べていけるならそれでいいよねって」

 それでも、主力商品のベーグルのおいしさが評判を呼び、県内各地からに限らず、熊本、佐賀など遠方から足を延ばしてやって来るお客さんもいる。「場所からして予想以上」と驚く繁盛ぶりだ。

 毎日店頭には30種以上の商品が並ぶ。曜日や天候で判断して、その日に売り切るだけのパンとベーグルを焼く。10時に開店すると12時までは接客のピークタイム。商品がなくなり閉店するまでレジに立つ毎日だ。「高菜」や「明太チーズ」といった惣菜を入れ込んだベーグルを売れ筋に、調理パンや菓子パンの人気も高い。土日は人気のドライブスポット・糸島へ行くカップルや家族連れでさらに繁盛する。「おいしかったよ」と言って再来店してくれるお客さんの笑顔がやりがい。そして、常連客が新しいお客さんを呼んでくれる。

「ただ、分かりづらい場所にあるから、初めての人はなかなかたどり着けないんです。気軽に電話してくださいね」

“いてまえ打線”の一員としてのファーストキャリア


 近鉄に所属していた01年、パ・リーグを圧倒した“いてまえ打線”の一員として働いた。主に指名打者として124試合に出場し、規定打席にはわずかに届かなかったが、打率.316、21本塁打、72打点をマーク。いずれもキャリアハイの成績で、最高のシーズンとなった。



 優勝を決めた劇的なシーンが思い出される。9月26日のオリックス戦(大阪ドーム)、2対5の9回無死満塁から北川博敏が代打逆転サヨナラ満塁本塁打。セカンドランナーだった川口はかつて経験したことがない興奮の中で仲間が待つ本塁までを走り抜けた。

「どっかーんってなりましたからね。超興奮していました。だから、三塁ベースをちゃんと踏んだかなって今でも不安です(笑)」

 95年ドラフト4位で入団して間もないころは「3年でクビになる」と・・・

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