週刊ベースボールONLINE

球界クローズアップ
まだまだ終わらない巨人野球賭博問題

 

球界を震撼させた野球賭博問題に1つの区切りがついた。10月5日に明るみになってから約1カ月、NPBの調査委員会からの報告を受けた熊崎勝彦コミッショナーが11月10日に都内で会見し、賭博に関わった3選手を無期失格処分、さらに巨人に制裁金1000万円を課すことを決めた。野球賭博による失格処分は1969年の「黒い霧」以来の重い処罰となり、さらなる余波と全容解明に向けて、この事件はまだまだ終わりを見せない。

事件の全容解明には程遠い決着


 10月5日に問題が公になってから1カ月余りが経過した11月10日。東京・大手町の読売新聞本社で巨人が記者会見を開いた。約2時間前に熊崎勝彦コミッショナーがNPBの調査委員会の調査報告を受け、福田聡志投手、笠原将生投手、松本竜也投手の無期失格処分と、巨人への制裁金1000万円を科す処分を発表した。

 この処分に際し、久保博球団社長は「深刻かつ重大な事態であると受け止めております。この場をお借りしてプロ野球ファンの皆さん、ならびに関係者の皆さまに心からお詫び申し上げたい」と深々と頭を下げ、再発防止と信頼回復に全力を尽くすことを誓った。

10月21日の会見で状況説明をする久保博球団社長(左)と森田清司法務部長。「野球史を汚した」と沈痛な面持ちで陳謝した



 前日に原沢敦専務取締役球団代表が引責辞任し、球団では「紀律委員会」の発足をはじめとした再発防止策を発表。この日の会見では久保社長と桃井恒和球団会長が役員報酬の半額を無期限で返上し、渡辺恒雄球団最高顧問と白石興二郎オーナーが役員報酬を2カ月間、自主的に全額返上することが発表された。球団としてはさまざまな形で「けじめ」を付けた格好で一定の理解はできる。ただ、何ともすっきりしない感覚をぬぐえないというのが、大多数のファンの印象ではないだろうか。

 その理由の1つは言うまでもないが、野球賭博問題の全容解明には程遠い決着となったことだ。調査委は「重要な関係者から十分な聴取の協力が得られず、携帯電話の提出も受けられなかった。そのため、組織的全体像までを明らかにできているものではない」と説明。野球賭博常習者の大学院生A氏、飲食店経営者B氏からは、核心に迫る聴取を拒否された。調査には法的な強制力がなく、調査委の大鶴基成委員長は「確証がなければ、プライベートでもある携帯の提出は求められない」と話した。

 当初、3選手はB氏と相談するなどして「金銭ではなく食事を賭けていた」などと口裏を合わせ、虚偽の弁解をしていた。それを覆す決め手となったのが、3選手が削除した携帯電話メールの復元(デジタル・フォレンジック)だったことからも、そこに踏み込めない調査の限界、困難さは推して知るべしだろう。

 もう1点は、野球賭博問題の調査に端を発して明らかになった、日常的に賭博が横行している現状に対する不安が、ぬぐえないことだ。永久失格処分(いわゆる永久追放)に次ぐ重い処分を受けた3選手に関しては、野球協約の第180条に抵触する野球賭博を行っていた。ほかにも野球賭博常習者との交際や、法律で禁じられているバカラ賭博に興じていた事実もあり、処分は免れない。しかし、巨人による全選手、コーチ、職員計276人を対象とした聞き取り調査や、調査委による調査では3選手以外の間でも一部で賭け麻雀や賭けトランプ、さらに夏の全国高校野球選手権大会などの際に一口5000円〜1万円の参加費を出してクジを引き、引き当てた高校の成績により賞金を配分する「遊び」が行われていたという。

 賭け麻雀の舞台になっていたのはジャイアンツ球場の近くの雀荘・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

HOT TOPICS

HOT TOPICS

球界の気になる動きを週刊ベースボール編集部がピックアップ。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング