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「中日ドラゴンズ80年史 シリーズ1 1974-1999」発売のお知らせ
山本昌×山崎武司 中日OB対談「ドラゴンズ愛を貫くヤマヤマコンビ」

 

ナゴヤ球場からナゴヤドームへと本拠地球場が移り変わる変革の時代、投打の両雄としてチームを支えていたのが山本昌山崎武司だ。この“ヤマヤマ・コンビ”をはじめとした実力者が力を発揮して、この時代、巨人ヤクルトとしばしば優勝争いをし、そして1999年には11年ぶりの頂点に輝いた。投手と野手の違いはあるが互いを尊敬し、選手として高め合った2人がそのドラゴンズ愛を語る。
構成=小林光男 写真=前島進(インタビュー)、BBM

寮生活と言えばバスクリンの匂い


山崎 山本さんは神奈川出身ですけど、ドラゴンズに入団する前、名古屋にはどんなイメージを抱いていたんですか?

山本 父親がドラゴンズファンだったので、選手の名前は知っていたけど、名古屋という町のイメージはまったくなかったかな。プロに入るまで名古屋に降り立ったこともなかったから。唯一、修学旅行のときに新幹線で通過したくらい。新幹線の窓からナゴヤ球場が見えたのは覚えているよ。

山崎 でも、すごく住みやすい町でしょう?

山本 そうだね。東京と比べると非常にコンパクトだし。それに名古屋の何がいいって、人が優しい。ファンの方も熱狂的だけど、そこまで暴走しないというか。応援の仕方がまとまっていて、すごく品があるように感じていたね。

山崎 でも、方言はきつく感じるみたいですね。楽天のユニフォームを着ているとき、東北の人から、よく「怒っているの?」と聞かれた。それに、関西弁に間違えられることが多かったです(笑)。

山本 32年も住んでいるから、僕もすっかり名古屋人。普通に話しているつもりでも、随所に名古屋弁が出るみたい。

山崎 冒頭で、山本さんは「父親がドラゴンズファンだった」と言っていましたけど、ドラゴンズに指名される予感はあったんですか?

山本 ドラゴンズは頭になかったね。高校時代は無名だったし、漠然と指名されるなら大洋かな、と。地元の球団が僕を一番見てくれていると思っていたから。ドラゴンズに指名された瞬間は「オヤジが喜んでいるだろうな」ということが真っ先に頭に浮かんだ。愛知出身だけど、山崎は巨人ファンだったんだよな。

山崎 親が九州出身で、当時は巨人一色。それに僕はちょっと変わった子どもで、他人と同じというのがすごく嫌だった。学校のクラスでも9割がドラゴンズファンだったので、あえて逆の巨人ファンになるのもカッコいいという思いもあったので。それに、強いものへのあこがれもありましたから。

山本 じゃあ、ドラフトでドラゴンズに指名されて……。

山崎 本当にがっくりですよ(笑)。どちらかというと、地元の球団には行きたくないと思っていたので。東京で勝負したい気持ちが強かったですから。

山本 プロに入った後は寮生活がスタート。そこで僕が思い出すことといえば、風呂の匂いなんだよね。

山崎 そういえばバスクリンの匂いがしていましたね。

山本 寮のドアを開けて下駄箱のほうに行くと、バスクリンの匂いが……。今もその匂いを嗅ぐと、寮生活を思い出すんだよね。

山崎 寮生活も多少は厳しかったですよね。全体的な“集合”もありましたし。

山本 例えばナイターが中止になって、先輩たちが寮のグラウンドへ練習しにくる。そのとき誰々が挨拶しなかった……とかそういう話だよね。でも、一人部屋で、六畳一間だったけど、快適は快適だったと思う。

山崎 どんなところでも自分の空間があれば、気が休まりますから。そういえば門限破りも日常茶飯事(笑)。

山本 それこそ、バスクリンの匂いがする風呂場の窓のカギを1個、あけておいてもらう。帰ったら、そこから入る。でも、当時の坪内(道典)寮長の見回りはすごかった。夜中の2、3時でもやっていることがあるから。帰って来て、懐中電灯で照らしている光が見えると、「見回りだ」と。外で待っていて、光が消えてから寮の中に入ったりしてね。ただ、練習は厳しかった。

山崎 どちらかというと、やらされていた感じですけど(笑)。昔は有無を言わせずに、「やれ」でしたから。今は自主性を重んじて、意外と二軍の選手でもやりたいことをやらせてもらえますから。

山本 当時はメチャクチャ走らされたり、投げ込みをやらされたり、バットを振らされたり。今の選手は自分で考えて練習する。例えば全体練習が終わったら自らトレーニングルームに入って、いろいろ鍛えて、最後は体のケアをしているから。僕らが入団したころは、二軍トレーナーも一人だけで、体を触ってもらえなかった。だから、今の選手のほうが球場にいる時間は長いんだよね。当時は例えばドワーッと走らされて、倒れたら帰っていいぞ、という感じだったから・・・

ナゴヤ球場とナゴヤドームの思い出や長嶋巨人との死闘、1999年の優勝などの話で盛り上がるヤマヤマコンビ。この続きは、「中日ドラゴンズ80年史 シリーズ1 1974-1999」でお読みください。



中日ドラゴンズ80年史 シリーズ1 1974-1999」
2016年3月16日より発売
ベースボール・マガジン社
定価:1,389円+税



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