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緊急特集・本誌編集長コラム
どうなる巨人!?深まる闇はいつ晴れるのか

 

闇は広がるのか


 今回の件は、さまざまに不明瞭な個所があり、まだ全貌が見えてこないが、事件発覚後、巨人にまん延していたというギャンブル行為、ノックでの高額な金銭の賭けなど、おそまつな事実も次々明らかになってきた。おそらく、一つひとつの始まりに悪気はなかったのだと思う。ギャンブルには公営なら合法、それ以外が違法という枠組みがあり、要は国におカネが落ちるかどうかが境界線だ。あいまいさもあって賭けゴルフ、賭け麻雀など、日本人が抱く仲間内でのギャンブルへの心理的なハードルは決して高くはない。かつての球界では「球場行きのバスが出る直前まで麻雀をし、試合が終わった後、ユニフォームのままその続きをした」といった類の話が、豪快な武勇伝として語られていた時代もある。

 ただ、ギャンブルは“刺激”であり、人間はどうしてもより強い刺激を求める傾向がある。加えて、男性社会独特の集団心理もあるだろう。避けると「付き合いが悪い」と言われ、より刺激的な方向に進むことを「勇気」と勘違いする。過去にも多くの例があるが、「ばれなければ何をしてもいい」という甘えは必ず周囲に連鎖し、エスカレートする。今回も甘えが甘えを呼び、結果的には欧州の寓話のように、闇の世界を引き寄せてしまった。

 今回、何度も質問に出て、そのたびに巨人が否定していたのは「高木が自分の試合に賭けていたのか」どうかだった。これは禁断の“八百長”につながる。かつて1969年から70年に吹き荒れた、あの“黒い霧事件”の再現だ。今回は、むしろ巨人にまん延していた甘えの構造が問題だとは思うが、万が一、そのような事実が発覚すれば、プロ野球自体が反社会性のものととらえられ、大げさではなく、築き上げてきたものが一気に崩れ去る。

 高木は翌9日に記者会見を行い、10分以上にわたって自らの口で事件を説明した。中核にいるBについて「最初はいい人と思いましたが、いまはすごく怖いというか恐ろしいと思います」と語っている。裏社会とBの関係は明らかになっていないが、今回がどうこうではなく、もし賭博を続け、借金がかさんで脅された場合、たとえば「登板のとき先頭打者に四球を出せ。ほかは何もしなくていい」という要求から逃げることができたのか……。当然、その後、要求はエスカレートするはずだ。最後はどうなるのか……。

 さらし者のような会見だった。カメラのフラッシュの光の洪水を浴びながら、涙を浮かべつつも必死に受け答えし、最後、会場を去る際、深く頭を下げ、その後で初めて目をぬぐった高木。その姿に誠実さは感じた。自分の言葉でファンに謝罪したい、という思いには同情するし、これからの人生を頑張ってほしいとも思う。ただ、ふたたび日本でプロのユニフォームを着る可能性は皆無に近い。

たかぎ・きょうすけ●1989年9月5日生まれ。石川県出身。星稜高から国学院大を経てドラフト4位で12年巨人入団。初登板から139試合に登板し、6勝0敗。つまり139戦無敗を続けていた


 久保社長は「球団の責任者として、3人とも去年で膿を出し切れなかったという責任を強く感じている」と白石興二郎オーナー、桃井恒和会長、渡辺恒雄最高顧問の辞任を発表。球団会長、最高顧問などと肩書を変えながらも巨人のトップであり続けた渡辺氏が、ついに巨人から完全に離れることになった。04年にオーナーを辞任した際は、すぐ球団会長で戻っているが、89歳という年齢を考えればもう復帰はあるまい。新オーナーには読売新聞社グループの最高顧問・老川祥一氏(74歳)、オーナー代行に球団の特別法律顧問だった松田昇氏(82歳)が就く。待ったなしの思いは、巨人が一番感じているはずだ。

 最悪なことは、事件がこれで終わったかどうか分からないことである。巨人は「調査を続けることが再発防止につながる」と話していたが、現状は『週刊文春』が記事を出し、後追いをするように事実を明らかにしているだけだ。ほかの球団には本当になかったのか、本当に自分の試合に賭けていた事実はなかったのか。われわれは、もちろん『週刊文春』と同じ週刊誌メディアであるが、一方で球界の一角を担う存在とも思っている。70年前、終戦後の荒廃から球界が立ち上がる際、ともに汗を流し、球界復興に尽力した自負もある。それが正しいのであれば、ほかのメディアにケンカを売っても球界のために戦う覚悟もある。

 だから、あえて言わせてもらう。

「早くすべてを明らかにしてくれ」

1969年から70年にかけ球界を混乱に陥れた“黒い霧事件”。このときは選手の敗退行為と、それにともなう金銭の授受が問題となった。今回とはまったく性質の違うものではあるが、“入口”となってしまう可能性は決して低いものではない[写真は75年4月、コミッショナー委員会での事情聴取]

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