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球界の闇を許すな!
メジャー・リーグ薬物汚染の現状とサポート体制

 

1980年代、コカイン・薬物問題で荒れたメジャー・リーグ。現在でもコカインを常習する選手たちがいる。しかし、過去の失敗から、彼らを救うシステムも出来上がっている。その現状をあるスター選手を例に挙げ、リポートする。
文=佐藤直子

ケガによる挫折でコカイン依存に


 アメリカという国は、努力する者や正直者に寛容だ。だからこそ、目標に向かってたゆまぬ努力を続ける者にはアメリカンドリームという大きな褒賞が待っているし、桜の木の逸話で知られる初代大統領ワシントンのように正直に罪を告白すれば許しが待っている。その基本精神は、いかなる状況にも適用される。もちろん、メジャー・リーグでも、だ。

 メジャーでは、罪や過ちを犯しながらも2度目のチャンスを得て、復帰を果たす例が多い。ステロイドなどの禁止薬物問題で言えば、ヤンキースのアレックス・ロドリゲスは、2009年に過去の使用経験を認めて謝罪し、さらに13年にバイオジェネシス問題の中心人物となったが翌年に1年間の出場停止処分という贖罪を経て、昨季から戦列に復帰している。

 復帰した現在もなお、更生に向けたサポートを受けながら奮闘しているのが、レンジャーズの外野手ジョシュ・ハミルトンだ。事実は小説よりも奇なり、というが、彼の人生はまさに栄光と挫折の繰り返しだ。ご存じの方も多いとは思うが、ここでハミルトンの略歴を振り返りたい。

 高校時代に「ファイブツール」プレーヤーとしてその名を轟せたハミルトンは、1999年ドラフトでデビルレイズ(現レイズ)に全体1位指名され入団。01年春に交通事故に遭い、ケガの治療中にコカインなどの薬物やアルコールの依存症に陥ってしまう。全身を覆う26個のタトゥーはこのとき入れたもの。かつてこんな話を聞かせてくれたことがある。

「交通事故によるケガで、しばらく野球ができなかった。それまで挫折を知らなかった自分は、何をしたらいいか途方に暮れてしまったんだ。ヘタに金を持っているのもよくなかった。飲んだくれ、ドラッグを買いに行く毎日。それぞれのタトゥーには意味があるんだけど、1つ入れ始めたら止まらなくなった部分もある。とにかく空しかった」

 02年に最初の薬物使用が発覚。当時コミッショナーだったセリグ氏に、25日間の出場停止処分と薬物依存更生施設への入所を命じられた。だが、復帰後もたびたび薬物検査に引っかかり、04年に2度目の出場停止処分を受け、ここでようやく目覚めた。

 依存症からの脱却を目指して薬物依存更生施設への入退院を繰り返し、心のよりどころをキリスト教への信仰を深めることに求めた。05年が終わりを告げるころには、アルコールや薬物とは無縁の生活を取り戻すことに成功。彼の努力を認めたセリグ氏は、06年に週3回以上の尿検査を条件にデビルレイズの選手として現役復帰を認めた。トレードを経てたどり着いたレッズで07年にメジャー・デビュー。復帰までの道のりは、感動ストーリーとして広く知られることになる・・・

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