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生まれ変わった巨人・坂本勇人 好調を支える心技体の成長

5月17日試合終了時点でチーム打率.245と低迷する中、リーグトップの打率.366を残している坂本勇人(写真=BBM)

 

偉大な先輩たちからのヒントが打撃復活のきっかけに


 軸足(右足)にグッと力を乗せ、コマのように鋭く体を回転させた。5月11日の阪神戦(甲子園)、巨人坂本勇人が阪神のランディ・メッセンジャーから放った9号ソロ本塁打は、理想どおりの1発だった。打ったのは長身から繰り出される縦に割れるカーブだったが、体が突っ込むことなく、しっかりと引きつけ、中堅バックスクリーン左にたたき込んだ。

「集中して、ひと振りで仕留めることができたので良かったです」

 4月27、28日の阪神戦と合わせ、甲子園では3試合連続のアーチ。高橋由伸監督を「打球にひと伸びある。なかなか、甲子園であそこまでは飛ばないよ」と驚かせた特大弾で、巨人では1999年の松井秀喜以来の記録に並んだ。

 振り返れば、その大打者の教えが今季の躍進のヒントだった。今年2月の宮崎春季キャンプ、臨時コーチで訪れた松井氏に「軸足に体重を残して打つこと」を助言された。長嶋茂雄終身名誉監督からも「右足をもっと意識した方がいい」とも言われていた。

元来、ボールを捉えるポイントを前に置き、「引っ張り」が得意のバッター。助言を受けた後、自分の特徴を生かしながら、一流打者の教えを取り入れた新打撃フォームに取り組んだ。

「去年、あれだけ悪かったので、何かを変えないと」

 3、4月は打率.352、6本塁打、20打点。昨年同時期の打率.214、0本塁打、12打点と比べれば、変化は歴然だった。

 打撃スタイルは、原点回帰した。自身も「初球からどんどん、積極的に振るバッター」と自己分析するが、ここ数年は「ボール球を振ったらダメとか、いろいろ考えてしまって……」と持ち味が消えた。その反省から、今季はファーストストライクを積極的に打つ意識を徹底。5月17日時点で初球から打ちに出た際の成績は25打数16安打、3本塁打、9打点と好成績をマークする。

 ただ、これらの好成績にも、周囲の反応は冷静だった。かつて、本塁打王のタイトルを2度獲得した江藤智打撃コーチは「ポテンシャルが高い選手ですから。本人の中でしっかり考えながらやっていますし、彼本来の力どおりの成績」とコメント。横浜(現DeNA)、ヤクルト時代に対戦経験のある捕手の相川亮二は「若いころから、トリプルスリーだって狙えると思った選手。全然、驚きませんよ」と話した。

 メジャーで122本塁打を放った新助っ人のギャレット・ジョーンズも、打撃センスの高さを素直に認める。「ボールに対して、最短距離でバットが出てくるし、ボールをしっかりと芯で捉える。素晴らしいスイングだと思うよ」と絶賛。才能に一目置くからこそ、試合前や試合中に相手投手の特徴や打撃論を交換。「僕にいいアドバイスをくれるんだ」と感謝する。

 心身での成長も、成績に直結した。昨年の12月、前年よりも早く、自主トレーニングを開始した。後輩の吉川大幾を連れ、アメリカ・ハワイで約10日間のトレーニング。ウエートトレーニング、ランニングなど、体づくりを主に、体を追い込んだ。1月のアメリカ・グアム自主トレでも、19歳の岡本和真、20歳の和田恋ら若手と同じハードなメニューを消化。肉体改造に着手した。

 主将2年目の自覚も行動に表れる。キャンプ中から、新加入のルイス・クルーズらと練習から積極的に会話。ドラフト1位ルーキー・桜井俊貴などにも、声を掛け、チームに溶け込みやすい環境を整えた。「去年よりは、自分から意見を言えるようになったのかなと」と言うように、主将としての存在感も増した。

 心技体の充実が、現在の好調を支えている。
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