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阪神・高山俊 攻められた弱点と逆襲のシナリオ

5月31日試合終了時点で打率.267、2本塁打、20打点。ここから打率を上がられるか注目だ(写真=BBM)

 

金本監督が認めた打撃センスと指摘した弱点とは


 安打を放つことに誰も驚かなくなっている。これが阪神の黄金ルーキー、高山俊の非凡さを表す、明快な事実だろう。東京6大学で通算131安打を刻み、歴代最多記録を更新した安打製造機がプロでどれだけ通用するか。今季、開幕前からの見どころだった。

 2カ月が経過し、1つのデータを提示したい。5月22日広島戦(甲子園)のマルチ安打で区切りの50安打。この時点でチームトップの安打数だ。143試合に換算すると152安打ペース。この量産ぶりだけ見ても、まずは順調にプロのスタートを切ったと言っていい。

 実に堂々と振る舞っている。同21日広島戦(甲子園)でも勝負強さを見せた。同点の9回1死三塁。目の前で福留孝介マウロ・ゴメスが敬遠されている。すべての塁を埋め尽くし、カープの守護神・中崎に対決を挑まれた。3球目だ。浮いた直球を振り抜くとライナーは右前へ。プロ入り初めて、サヨナラ打をマークした。

「僕と勝負するということですから、打つことしか考えていなかった」。伏線があった。直前に打ち損じて三塁ファウルゾーンに飛球を打ち上げてしまった。だが、風にあおられて安部が捕球ミス。「打ち直し」を完璧に仕留めるところも大物だ。「的を小さく絞っていた。監督にも『がっつくなよ』と言われていました」と声をはずませていた。

 打席を重ねれば弱点を暴かれ、相手バッテリーはそこを容赦なく攻めてくる。徹底して突いてくるところがプロの厳しさだろう。

 開幕から3週間たった4月14日DeNA戦(甲子園)終了時点で打率は3割2分1厘。17試合中、無安打はわずか2試合だった。その直後から、右肘を痛めて欠場するなど、調子は下降線をたどり、4月下旬は17打席連続無安打。「1年目なので、底が特にないので(状態は)分からない。結果が出なくても、自分のスイングをしていきたい」。

 理由ははっきりしていた。バットのヘッドが遠回りするスイング軌道を見抜かれて、執ように内角を攻められた。打撃のバランスを崩し、打ち損じが目立った。

 2月の沖縄・宜野座キャンプで見初めてから、まったく教えていなかった金本知憲監督が動いたのは5月10日だ。巨人戦が中止になり、初めて身ぶり手ぶりの本格指導。バットの入れ方、グリップの出し方などを約10分間、助言した。

 指揮官は「ドアスイングだからね。パッとインサイドに来た時、タイミングが遅いから差し込まれる。でも、一番教えるのが難しい回転軸は完成されている。あとはバットの出し方とタイミング、慣れ、の3つだね。いまのままでいいと思っていないでしょう」と評していた。

 片岡篤史打撃コーチも「内をさばくためにね。どうしてもバットが遠回りしていたから。左打者はどうしても、そこを克服しないと」と説明。技術を修正しつつ、弱点を克服していく。これを繰り返して、真のレギュラーに近づくのだ。

 オールスターのファン投票用紙にもノミネートされ、早くもチームの顔だ。発奮材料は多い。同じセ・リーグの新人王候補として、しのぎを削るDeNAの今永昇太だ。ここまで阪神戦3試合に登板して1勝2敗だが、防御率2.50と抑えられていた。伸びのある速球にナインが苦戦するなか、高山は同い年の同期生サウスポーから、ここまで6打数2安打と善戦する。

 4月14日にプロで初対戦。6回はグリップを余らせ、右前に運んでいた。「いいピッチャーです。大学の頃から真っすぐが強いイメージ。(6回は)真っすぐに相当差し込まれていたので、なんとか出塁しようと少しバットを短めに持って、タイミングも早めにした」。大学時代も、明大の主力として駒大のエースと向き合っていた。ライバル相手に燃え、力量を見せつけた。

 まだ試行錯誤しながらプレーしている段階だが、それでも、快音を響かせる。開幕戦で中日大野をとらえ、巨人菅野や広島黒田からも安打を連ねるなど、各球団のエースと渡り合う姿は新人離れしている。その一方で、5月29日の巨人戦(東京ドーム)では先発したが、内容の薄い2打数無安打で、8回に代打今成亮太を送られる悔しさも味わった。成功も失敗もすべて受け止めて、スケールの大きな選手への成長を目指す。
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