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マエケン 首位独走のカープに「自分も負けられない」 メジャー前半戦を振り返る

メジャー前半戦を8勝6敗、3連勝で締めた前田健太。後半戦も調子を維持できるか注目だ(写真=GettyImages)

 

直球に活路を見出し不振から抜け出す


 メジャーリーグは12日にオールスターが開催。15日からは後半戦に入る。今季からメジャーに移籍したドジャースの前田健太は、7月10日(日本時間11日)のパドレス戦に勝利し、前半戦を8勝6敗、防御率2.95で終え、後半戦を迎える。

 今月2日、前田に前半戦を振り返ってもらう機会があった。この時点で7勝5敗、防御率2.82だった。

「この半年は早かった。意外とスムーズに投げられていると思う。中4日もそれほど苦にならない。(メジャーの練習方法などについて)情報がたくさんあったので、予想外のことはなかった。そのへんは、先に(メジャーリーグに)来た先輩たちのおかげ」と語っていた。

 中4日の他にも滑るボール、硬いマウンド、米国での生活など壁はいくつもあったが見事に克服したようだ。

 デビューは強烈だった。4月6日のサンディエゴ。6回、5安打、無失点で勝利投手になった。しかもみずから左越え本塁打を放った。4試合終了時点で3勝無敗、防御率0.36。メジャーの打者たちは、初めて目の当たりにする前田のスライダーに手こずった。

 だが情報が増えていくにつれ、メジャーの打者は対応するようになった。その結果、4月28日のマーリンズ戦から5試合で0勝3敗。失点は4、2、4、4、4と続いた。1ヶ月で早くも壁に当たったのだった。

 ここで前田はフォーシームの速球に活路を見出した。スライダー、カーブ、ツーシーム、チェンジアップと変化球を軸にしてきたが、真っ直ぐも多用することにした。メジャーで投げるには「とにかくボールを動かすことが大事だと思っていたし、その通りにやってきた。でも、動かさない投手もいるし、通用するなら動かす必要はない」と、メジャーで投げながら悟った。投球のバリエーションが増えたことで不振を脱出。投手として成長したのだった。

 もともとスプリングトレーニングのころから前田の評価は高かった。デーブ・ロバーツ監督は「とにかく頭の切れる投手。米国の野球にも適応した。頼もしい限り。チームにも溶け込んだ」と、うれしそうに話したものだ。

 ベテラン捕手のA・J・エリスは「1球、1球に意味がある。受けていて楽しい投手だ」という。 ドジャースOBで解説者のオーレル・ハーシュハイザー氏も「右打者の外角にスライダーを投げるにしても、変化の小さいスライダーでストライクを取っておいて、次には同じコースに変化の大きなボールになるスライダーを投げて空振りを取る。逆に、まずボールになるスライダーを見せておいて、次にストライクゾーンへ小さな変化のスライダーを投げてストライクを取る。そうした芸当ができる。それだけのセンスとコントロールがある」と評していた。

 前田と言えば、日本では切れ味鋭いスライダーと巧みな投球術に定評があった。その長所がメジャーでも認められているのである。投球だけでなく、打撃や守備、走塁も評価されている。7月6日のオリオールズ戦では代走に起用されたほどだ。投手としてだけでなく、野球選手としての総合力が買われている。

 心配なのは故障である。入団前の検査で右肘に異常の可能性が認められて契約内容が抑えられた。それだけに体の手入れには余念がない。登板間のブルペンでのピッチングは、15球程度軽く投げるだけ。体に余分な負担をかけないように注意を払っている。

 メジャー1年生の前田にとってこれからが本番だ。「こちら(メジャー)では実績がない。自分の立場を作り上げていかなければいけない」(前田)段階だ。そんな前田にとって、古巣・広島の快進撃は励みになっている。

「日本のプロ野球はチェックしている。カープがいい成績を残しているのは刺激になっている。カープの選手も自分の登板を見てくれているというので、しっかりと自分も負けないようにやらなければいけない、と思う」という。前田はいま、心技体とも充実してメジャーで戦っている。

取材・文=樋口浩一
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