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ペナントの焦点

打者・大谷翔平の躍進を紐解く 4年目で進化した“配球の読み”

 

本職が投手であることを忘れさせてしまうかのように、打者として熱い視線が注がれている。投手で出場しながら先頭打者本塁打を放ち、試合を決めるなどセンセーショナルな新風を吹かせている。「打つことは好きです」と無邪気に明かしている、超人的な22歳。今季の躍進ぶりをひも解くには不可欠で、根拠となる重要なファクターが存在する。
文=高橋和誌(スポーツライター)


想定内のブレーク


 登板を回避し、打者に専念していることもあって、多少ペースが落ちてはいるが、8月18日現在、規定打席未到達ながら74試合に出場して打率.346と驚異的なハイアベレージをマーク。リーグ1位、ロッテ角中勝也が.335だから、もし規定打席に達したら首位打者の可能性もある。14日の楽天戦[koboスタ宮城]ではプロ入り4年目で自己最多を更新する17本目のホームラン。17日のオリックス戦[札幌ドーム]では18号。これはリーグ5位で、同僚・中田翔を抜き去った。

 揺るぎない絶対的な土台になっているのが非凡な才能だ。花巻東高時代はアマ史上初の160キロ台をたたき出し、投手としての存在がクローズアップされがちだったが、打っても高校通算56本塁打。当時からプロでも上位指名される水準に到達していた。ドラフトで強行指名し「二刀流」の条件を提示して翻意させた日本ハムも、投手は「将来性」で、打者としては「即戦力」とジャッジしていた。

 野手1本に絞れば、プロ1年目から中軸を打てる素材と評価し、ミートセンスと、ボールを遠くへ飛ばせる能力に秀で、高校生レベルでは技術、パワーが突出しているとの見方だった。当時はゼネラルマネジャーで、現在はスカウト顧問を務めるのが山田正雄氏。指名から入団まで難交渉の陣頭指揮を執ったベテランの目利きは、こう力説していた。

「投手としては未知数だけれど、魅力がある。打者なら、すぐに一軍で使える」

 日本ハムは入団後から未成熟だった投手に重点を置いて育成。プロから3年間は戦力として登用しながら「二刀流」で1年間、戦えるための体作り、蓄積疲労などによる故障防止のために打者出場を制限してきた側面もある。DHを解除して投手で登板時に打席に立つ「リアル二刀流」で顕著なように4年目の今季、一気に限定を解除した。球団の狙いでは、元来の才能とプロでの経験を加味すれば、この4年目での覚醒は想定内ではあったのだ。必然のブレークはこの持って生まれた天性のポテンシャルが大前提にある・・・

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