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特別企画・緊急インタビュー

川淵三郎インタビュー 分裂のバスケ界を立て直したサッカー界の“ドン”は「野球界の危機」をどう見ているのか。

 

読者の皆さんの多くが唐突な企画に感じるかもしれない。WBCに続いてペナントレースの開幕を控えるプロ野球は近年、観客動員数を確実に伸ばし、隆盛を誇っているかに見える。しかし、一方で、球界の裾野とも言える野球少年が激減していることをご存じだろうか。学童&中学生の軟式野球選手、指導者を対象にした「ヒットエンドラン」(ベースボール・マガジン社刊)では、過去7回にわたり、「野球界の危機」と題した問題提起の連載を行ってきた。今回は本誌でその“出張版”として、1993年開幕のプロサッカー「Jリーグ」を成功させ、近年は分裂で国際舞台から締め出された日本のバスケットボール界の改革・再興に尽力した川淵三郎氏にインタビューした。
取材・構成=大久保克哉(前ヒットエンドラン編集長)


POINT1 指導者の資格


日本では2010年から野球少年の減少が顕著となり、その波はこれから高校野球にも及んでいくのかもしれない。ジュニア世代の野球現場を回ってみると、サッカーとの違いを最も指摘されるのが指導者の質。特に選手の母親たちにその声が多い。それはまた、この世代に限った問題ではないのかもしれない。

2010年を境に小学生の学童軟式チームが急坂を転がるように減っている。中学軟式チームも同様に減り続けている。本来なら選手の数で精査したいところだが、全国に30〜40万人いるとされる学童軟式は今日でも「資金難」から実数が把握できていない。


実数を把握している中学生世代で、野球[硬式・軟式・合計]とサッカーとで選手数の推移を比べてみると、2010年から増減が対照的になっている。この10余年でサッカーは約2万2000人増、野球は約8万2000人減、つまり少子化だけを競技者減の理由とするには無理がある。また野球界の一部には「中学は軟式が減っても硬式が増えているから安心」との説もあるが、大きくなるばかりの軟式の穴を硬式がとうてい埋め切れていない現実が読み取れる。


──サッカー界では、例えばあの「キング」こと三浦知良選手(横浜FC)でも、正規の資格なしには引退して即、Jリーグや日本代表の監督にはなれませんね。一方の野球界では、名選手の引退と監督就任が同時に発表されるケースも珍しくありません。

川淵 どんな名選手であれ、最上級のS級という指導者ライセンスがないことにはJリーグのトップチームを率いることはできない。コーチでもその下のA級が必要になるし、アマチュアでも少年少女のカテゴリーから各世代の代表チームまで、指導者はすべてライセンスを持っている。要するに、いまのサッカー界では資格を持っていない人間は指導をしちゃいけないことになっている。

──中学生以上の指導者となるには、競技実績だけではなく、長いスパンの研修や現場での指導テストまであるとか。

川淵 そう!そういう制度がちゃんと整備されたのはJリーグがきっかけなんだけど、やっぱり僕自身も指導者だったし、勉強しなければ・・・

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