校歌として歌われる『桐光われ等』の一節にあるのは「土匂う栗木の丘よ」。その歌詞のとおり、小中高が併設される桐光学園は、都会の喧騒を忘れさせるような緑豊かな多摩丘陵に佇んでいる。プロ5年目のシーズンへ向かう現在の松井裕樹を形成したのが、このグラウンドであり、師であり、仲間たちだった。 取材・文=富田庸、写真=大賀章好、BBM 懐かしい場所と待っていてくれる人
卒業して4年が経とうとしているが、その知名度、人気ぶりは変わらない。校内を歩けば注がれる、生徒たちからの羨望の眼差し。「松井裕樹が来ている!」。そんな声があちこちから飛んでくる。そして、色紙を手にした女生徒3人が「松井選手、サインお願いします!」。左腕は気さくに応じてペンを走らせる。3人は声をそろえて「ありがとうございます!」。そして、松井の姿が見えなくなると、「ヒャーッ!」と悲鳴にも似た声を響かせて走り去っていった。
校舎3階、かつて授業を受けた教室に入った松井は、迷うことなく廊下側前から3番目あたりの席に腰を下ろした。「ここが僕の席でした。この周辺は野球部員で固まっていましたね」。勉強しているふうな写真を、というカメラマンのリクエストに、松井は「教科書を読んでいるふうに? 教科書……読んでたっけな?(笑)」と言いつつも・・・
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