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噂のHOPEに直撃

ソフトバンク・甲斐野央インタビュー “本物のストレート”を追い求めて 「ストレートはプロ野球人生の中でずっと磨きたい球。ストレートが一番難しい」

 

注目のホープに焦点を当てる連載インタビュー。第3回はプロ初登板で白星デビューを飾った鷹のドラ1ルーキーだ。開幕からしっかりと自分の投球を貫き、日々成長する右腕。現状に満足することなく、自身の最大の武器に磨きをかけている。
取材・構成=菅原梨恵、写真=湯浅芳昭、桜井ひとし


気持ちを切り替えてつかんだプロ初勝利


 いきなりの延長ゲームとなった3月29日の西武との開幕戦(ヤフオクドーム)、4対4の延長10回のマウンドに向かった。開幕一軍をつかんだドラ1ルーキーは、三振5つを奪う圧巻の投球を披露。初勝利を手にすると、以降も4月21日現在、8試合に登板して無失点と安定感を見せている。

――プロ初登板初勝利を振り返っていただきたいのですが、相当緊張していたそうですね。

甲斐野 あまり覚えてないですね。何を投げたかというのがはっきりとは……。「あのとき3球目、首を振りましたよね?」とか言われたときに、「そういえばフォーク投げたな」と。周りから言われて徐々に思い出す感じです。

――登板があるかもしれないというのはどの段階から感じていましたか。

甲斐野 早い段階で言われることはないですけど、僕自身、毎日毎日投げると思って球場には来ているので。流れとか状況を見て、ブルペンで「ここら辺に行くかもしれないね」というような話がありました。スイッチを入れるところは、しっかりうまくできたかなと思います。

――オープン戦でもプロの打者と対戦はしてきましたが、開幕戦となると違いましたか。

甲斐野 違いました。朝、僕が球場に来てあいさつをしたときにチームの先輩方、球団スタッフを含めて全員が全員、目の色が違ったんですよね。開幕独特の雰囲気というか、「これが開幕なのか」と思いました。でも、それで僕自身も感化されて乗っていけましたね。

緊張を感じさせない堂々とした投球で、西武打線から5三振を奪い、プロ初登板で初勝利をつかんだ


――初めての打者が、前の打席で同点の満塁ホームランを放っている山川穂高選手。その山川選手から3球連続フォークで空振り三振を奪いました。

甲斐野 ストレートが使いづらいことはなかったんですけど、甲斐(甲斐拓也)さんとバッテリーを組ませてもらって、初球、2球目とフォークで追い込んで。3球目に関しては僕の中で、やはり先頭(打者)は大事ですし、場面も場面でしびれるところだったので、ここは簡単にいくんじゃなくて「ボールでいいや」というくらいでいこうと思ったんです。ボールにするならフォークでボールにしたいなという気持ちがあったので、3球目もフォークを選択しました。

――先ほどの首を振ったシーンですね。1アウト取ってからは少し落ち着きましたか。

甲斐野 まったくなかったです。ずっとテンパっていたというか、頭が真っ白な状態でしたね、いま振り返ってみると。あの回(10回)が終わってもホッとはしなかったです。

――回をまたぎました。ベンチに戻ってきてから「11回も」と言われたんですか。

甲斐野 そうです。ただ、僕自身は初めからもう1イニング投げるつもりでいました。なので、そこは全然、驚くことはなかったですね。

――これまでオープン戦を通じても、回またぎは初めてでしたが、不安はなかったですか。

甲斐野 大学(東洋大)時代も何度かやってはいたので。体の状態は良かったですし、メンタル面でも乗っていました。また、初登板がホーム(ヤフオクドーム)だったことでファンの方の声援がすごくて、ありがたいなって感じましたね。ファンの声援もオープン戦とは全然違いました。

――体の状態は良かったと言われましたが、新人合同自主トレ、春季キャンプ、オープン戦と過ごしてきて疲労感はありませんでしたか。

甲斐野 キャンプで第1クール、第2クールとあれだけ走り込んで、それが生きてきているのかなとは思いますね。僕自身、大学でもあれだけ走ったことはなかったですから。

――オープン戦終盤は打ちこまれる場面も見られました。開幕に向けてどのような修正をしたのでしょうか。

甲斐野 本当にオープン戦は全然いい成績が残せていなくて、それでも開幕一軍に残していただいていたので、期待を裏切りたくなかった。キャンプから一軍の、レベルが高いところに身を置いていたこともあって、理想を追い求め過ぎてしまう自分がいました。どうしても「負けたくない」だとか、「ああいう球を投げたい、コントロールのいい投手になりたい」とか、いろいろ考えてしまって。なので、開幕に向けては、本当に自分の持っている力、大学時代に出していた力を出そうと切り替えましたね。「周りとは違うんだ」というふうに考えて、自分の出せる力だけ出そうと、今はやっています。「開き直り」ですね。

――気持ちの切り替えが功を奏したわけですね。

甲斐野 大学時代もスランプがあったので、今回も同じように。ただ、プロとなると緊張感が全然違うので、さすがにすぐに切り替えられるわけではないですけど。そこはもう自分の経験で何とかしようとはしています。

――ちなみに、ウイニングボールはどうしましたか。

甲斐野 まだ手元にありますが、実家に贈るつもりです。

プロ初登板で初勝利をつかんだ


積み重ねの大切さと追い求める理想のボール


――プロの世界、これまでとは違う部分も多いと思います。

甲斐野 まずレベルが一番ですけど、あとは緊張感ですかね。

――甲斐野投手が登板する場面は、さらに緊張感が高まる、大事な場面が多くなってきています。マウンドに上がるときの心持ちは?

甲斐野 投げるまでは自分の中でイメージしたり、こういうふうに抑えたいなとか、いろいろと考えるんです。けど、コールが掛かったときには「行くぞ!」と。全部捨ててというか、まず本当に“抑えることだけ”しか考えてないですね。準備をしっかりやって、不安をなるべく少なくしてマウンドに上がるようにしています。

――中継ぎはいつ投げるか分かりません。試合への入り方が難しい部分もあるかと思いますが。

甲斐野 大学の話になってしまいますが、僕は大学で先発してダメで、ずっと中継ぎでやっていました。そのときに、投げる直前までスイッチをオフにしておかないと続かないと思いました。周りからもそういったアドバイスをいただいていましたし。そして、プロでもやはり同じことを言われる。大学での経験を踏まえて、スイッチの入れどころはうまくできるようになっていると感じるので、プロ入り後も中継ぎでやれているんじゃないのかなと思います。

――将来的に先発をやりたいと思うこともありますか。

甲斐野 いやー、自分にその能力があれば。「やってみろ」と言われてできるのであれば、ですね。やりたいというより、僕は与えられたポジションでしっかり投げ切る、投げたいとしか思っていないので。どこをやれと言われても投げられるだけの力をつけてやりたいなと思います。

――入団当初から抑え候補、“サファテ2世”と言われたりもしましたが。

甲斐野 僕自身は、こだわりはなかったです。

――12球団屈指の選手層を誇るソフトバンクにいます。ほかの選手に負けない強みを教えてください。

甲斐野 ないです(笑)。負けず嫌いは負けず嫌いですけど、プロの人って全員負けず嫌いですし。張り合うより、今は自分のことで精いっぱいなんです。僕が今こういうふうになりたいと思っているのは、試合を積み重ねていって、抑えていって、いつのまにかすごい数字を残している投手。「甲斐野、こんなに抑えとるんや!」と言ってもらえるように投げていきたいですね。先を見ずに目の前のバッター、試合を抑えたい。積み重ねが大事だと思っています。

――ここまで8試合に投げて防御率0.00。良い状態で来ていますが、課題もありますか。

甲斐野 今は始まったばかりですし、体も良い状態で来て腕も振れています。ですが、いろいろとアドバイスもらう中で「シーズン中盤、終盤になってくると、体に重みが出たりとか腕が振れないとかあるぞ」と言われているので、そういうときにどういうふうに抑えるか。今も何とか必死で抑えていますけど、その日、その日で調子が違うので、自分の変化というのをすぐ見極めて抑えられるようにしないといけない。そこが課題かなと思いますね。

――甲斐野投手の場合、最速158キロのストレートがあるのでストレートでどんどんと押していくのかと思いきや、投球を見ると配球のバランスがいいです。

甲斐野 今は甲斐さんや高谷(高谷裕亮)さんの配球を信じてやっています。お2人とも僕よりプロの世界を知っている方ですからね。なので、特別にストレートだけで勝負することは多くはありませんが、僕にとってストレートはプロ野球人生の中でずっと磨きたい球。ストレートが一番難しい。どれだけ磨いてもいいと思っています。今は正直なところ、ごまかして投げているんですよね。千賀(千賀滉大)さんともフォームの話などをしていて、お互いにまだ“本物のストレート”じゃないなという話になります。

――“本物のストレート”とは?

甲斐野 球速以上の体感速度だったり、ボールのキレ、伸びだったり。打者が分かっていても打てない、当たらないボールですね。

――キャンプのときには「総合力の高いピッチャーになりたい」とも言っていました。

甲斐野 この選手みたいになりたいというのはあまり思わないようにしています。僕の中では、投球内容やフィールディング、けん制、クイック……高めたいポイントはたくさんある。プロに入ってからこれまで以上にたくさんの方と話をさせてもらって僕自身楽しいですし、常に上を目指してやっていかないといけないなと。誰になりたいというよりは、僕のいろいろなところのレベルを上げていって、いいピッチャーの一角に入れるようにやっていきたいなと思っています。

集中力MAXのマウンド上とは異なり、練習中は工藤監督から指導を受ける中でも笑みがこぼれる


――先輩方からアドバイスはもらいますか。

甲斐野 僕は結構、聞くほうですね。先発、中継ぎなど関係なく聞きます。最近だと高谷さんに配球の話を聞いたり、森(森唯斗)さんにどういうイメージで投げているのかとか聞いたり。めっちゃ楽しいですよ! なので、今、充実した日々を過ごさせていただいています、試合はさておいて(笑)。試合はまだまだ慣れないです。

――1年目の目標をあらためて聞かせてください。

甲斐野『1年間ケガなく投げ切ること』です。

――入団当初は「新人王」を掲げていましたが。

甲斐野 もう、いいです。もちろん欲しいですよ。欲しいですけど、そこを目標にしてはダメなのかなと思ったので。さっきも言いましたが、まず積み重ねが大事。その積み重ねの結果、獲れたらいいですね。

もっと知りたい噂のHOPE 甲斐野央を大解剖!


基本データ・能力に自己採点と、Hの新セットアッパーの能力に迫る。

身長187センチ 体重86キロ 投打=右投左打
遠投=110メートル
視力右=1.5 左=1.5
握力右=55キロ 左=60キロ
右手の大きさ(中指から手首までの縦の長さ)=21センチ

[球種]
ストレート
フォーク
スライダー
ツーシーム
カーブ
チェンジアップ


「160キロまではあと2キロですし、プロ野球人生が終わるまでには投げたいなと思います。今は精度を高めることが大事。160キロでも打たれるときは打たれるんで。制球は四球が多い。持ち球のうち、カーブとチェンジアップはまだ投げていません。そのうち投げますよ。お楽しみに!スタミナは1年間投げていないので未知数で、メンタルもまだまだ。試合でド緊張してますから。将来的にはすべて5、いや僕だけ10でもいいです!」

PROFILE
かいの・ひろし●1996年11月16日生まれ。兵庫県出身。右投左打。東洋大姫路高では1年秋からベンチ入りし、2年夏は県準V、3年夏は16強を果たした。東洋大では1年秋から登板し(二部)、3年秋に5勝を挙げ、ベストナインと最優秀投手賞を受賞。4年春にはリリーフでリーグ3連覇に貢献した。19年ドラフト1位でソフトバンクに入団すると、春季キャンプでA組(一軍)に抜てき。最速158キロのストレートとフォークを勝負球に開幕一軍をつかむと、開幕戦でプロ初登板初勝利。4月21日現在、セットアッパーとしてチームの勝利に貢献している。

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