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田中大貴のMonthly Column

田中大貴コラム 『松坂世代』あの夏から21年目の延長戦 「森本稀哲は周りの人が喜んでくれることをいつも考えている人間」

 

兵庫・小野高、慶大で活躍し、東京六大学リーグ戦では早大・和田毅(ソフトバンク)と真剣勝負を演じた元フジテレビアナウンサーで現スポーツアンカーの田中大貴は、1980年生まれの「松坂世代」の1人。そんな野球人・田中が、同年代の選手たちをプロ野球現場の最前線で取材した至極のエピソードを、コラムにして綴る連載第14回です。

帝京高[東東京]時代は大型遊撃手で注目を集めた。主将でもあり、3年夏は甲子園に出場、3回戦で浜田高に敗れた


涙の現役最終打席


「稀哲さんまで回せ! 絶対に回すぞ!」

 2015年9月27日、埼玉西武ライオンズの三塁側ベンチから聞こえてくる声は、大観衆の声援をかき消すほどの勢いでバックネット裏の記者席まで聞こえていました。ライオンズのすべての選手が身を乗り出し、ベンチの最前列で声を枯らすようにバッターに声を送ります。

「満塁まで行けば稀哲さんに回る!俺らで絶対につなぐぞ! 稀哲さんに回せ!」

 8回裏。リードするライオンズの攻撃。このまま行けばライオンズ最後の攻撃は一番から始まる打順。七番に入っていた森本稀哲の打順までは、最低でも4人のランナーが出なければ回らないという非常に難しいシチュエーションでした。しかし、1人、2人と出塁し、打線は奇跡のようなつながりを見せます。キャリア最後の打席が回ってくることを信じ、バッティンググラブを装着してヘルメットに手をやった森本が、一歩ずつネクストバッタースサークルへと歩を進めました。

 そして、何と二死一、二塁で森本へと打順が回るのでした。

 森本稀哲、17年の現役生活にピリオドを打つ引退試合。その最終打席。ライオンズの総力を結集し、「稀哲さんまで回す」を合言葉に見事に彼らは森本まで打順を回しました。バックネット裏の記者席から数メートル先に見える森本は、昂ぶる思いを抑え切れずに男泣きです。

 自らの引退試合。途中出場で回ってくるとは到底思っていなかった最後の打席。引退する自分のためにつないでくれたチームメートへの熱き想いに涙がこぼれているようでした。

「稀哲さんだからこそ絶対に回したかった・・・

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