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田中大貴のMonthly Column

田中大貴コラム 『松坂世代』あの夏から21年目の延長戦 「上本達之は誰よりもホームベースを守ることの怖さと喜びを知る男」

 

兵庫・小野高、慶大で活躍し、東京六大学リーグ戦では早大・和田毅(ソフトバンク)と真剣勝負を演じた元フジテレビアナウンサーで現スポーツアンカーの田中大貴は、1980年生まれの「松坂世代」の1人。そんな野球人・田中が、同年代の選手たちをプロ野球現場の最前線で取材した至極のエピソードを、コラムにして綴る連載第15回です。

宇部商高では三番・捕手。プロ入り後はその打撃面も光った


サヨナラボーク


「あの日の、あの瞬間のことは、いまだによく思い出せないんです。気が付いたら、球審のボークの声が聞こえて、気が付いたらゲームセットになっていました」

 あの日、あの瞬間──。上本達之擁する宇部商高の対戦相手として、三塁側ベンチにいた豊田大谷高・古木克明(元横浜、オリックス)は、その光景を見ていたはずなのに、勝利した瞬間のことを覚えていないと言います。古木だけではありません。あの場にいた多くの選手たちが同じような表現を残しています。

 今から21年前の夏。1998年8月16日、山口代表の宇部商高と東愛知代表の豊田大谷高との一戦。“あの瞬間”は延長15回の裏にやってきました。

 豊田大谷高の攻撃。先頭打者がレフト前ヒット、続くバッターのセカンドゴロがエラーとなり無死走者二、三塁から宇部商高ベンチは次のバッターに敬遠を指示、満塁策を選択した直後の場面です。無死満塁の状況でマウンド上の2年生エース・藤田修平投手は、カウント1ボール2ストライクから、キャッチャーのサインを見つめていました。しかし、この日の211球目を投げる直前・・・

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