2007年夏は、「普通の公立校」佐賀北のドラマチックな優勝で幕を閉じた。ここでは決勝に進んだ2校を中心に、大会全体を振り返ってみたい。 写真=BBM ※記録は発刊時の2014年現在 広陵の応援席以外はすべて彼らを応援しているのではと思わせたほど、見る者を夢中にさせた佐賀北ナイン
全国の4081校の頂点に立ったのは佐賀北だった。1980年代までは公立校の優勝は珍しくなかったが、2000年代に人ってからは佐賀北が初。普通科高校ということでいえば、84年の取手二(茨城)以来23年ぶりということになる。日本中の似たような境遇の高校にとっては、大きな励みになったことだろう。
開会式直後の福井商戦に始まり、2回戦は宇治山田商との延長15回、再試合を経て勝ち上がり、準々決勝は帝京、決勝は広陵と、東西の横綱級を1点差で退けている。百崎敏克監督をして「どこにこんな力があるのか……」とうなったほどのチーム力。それは、甲子園で1戦勝つごとに蓄えられたものであり、翻れば日常の練習、過ごし方に由来していたのだろう。野球の練習をする時には野球を、勉強をする時には勉強に、一所懸命取り組む。その訓練の積み重ねが、甲子園という舞台で大きな花を咲かせた。
夏初制覇をめざし、しかし惜しくも3度目の準優勝となった広陵も、佐賀北に劣らぬ健闘だった。現在、プロの
広島で活躍するエースの
野村祐輔をはじめ、女房役の3年生・
小林誠司(現
巨人)、内野には主将の
土生翔平(元広島)、2年生・
上本崇司(現広島)と、のちにプロに進む選手が4人いることからもわかるように、チームの地力という点でいえば、むしろ佐賀北を上回っていた。
7回まで4対0とリードしながら、8回、不運に魅入られたかのように5点を失って逆転負け。それでも1回戦では、それまで3年連続で決勝に進出している駒大苫小牧を1点差で破り、準決勝では春の覇者・常葉菊川をやはり1点差で退けている。佐賀北と同様、広陵もまた1戦ごとに力をつけたチームであり、大会を華やかに彩っていたのは間違いない。大会前から「本命なき戦い」といわれていたように、大会では序盤から接戦、熱戦が相次いだ。1回戦では、エース
佐藤由規擁する仙台育英が智弁和歌山を下し、
中田翔のいる大阪桐蔭を破って大阪府大会を制した金光大阪は神村学園に敗れた。ほかにも京都外大西-常総学院、新潟明訓-花巻東、興南-岡山理大付、東福岡-桜井など、序盤から目の離せない試合が多かった。
無失策試合は決勝を含めて6試合。大会合計失策数も前年の125から99と大幅に減った。投手を含めた守りが素晴らしければ、試合が引き締まり、より感動的になる。それを証明した大会であり・・・
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