現在の球界では日本人最長身左腕だが、スタイルは技巧派寄りだ。唯一無二となる自らの武器を駆使して、貴重なサウスポーとしてルーキーイヤーを戦ってきた。それを支えたのが、これまでに築き上げてきた自らの“芯”だった。 取材・構成=阿部ちはる、写真=井沢雄一郎(インタビュー)、BBM 貴重だった二軍での時間
今季の楽天は辰己涼介や渡邊佳明などルーキーの活躍が目立つが、投手で唯一、一軍登板を果たしているのが弓削隼人だ。開幕一軍をつかんだものの、初登板直後に二軍落ち。その悔しさの中で自分と向き合い原因を追及すると、再昇格した7月30日の日本ハム戦(札幌ドーム)では完封勝利を挙げるなど、成長した姿を見せた。その後も先発ローテーションを守ると、9月6日の登板以降は、手薄となった左の中継ぎをカバーするべくブルペンに入るなど、フル回転の活躍を見せている。 ──今年は開幕一軍から始まり、4月4日(対日本ハム=楽天生命パーク)にプロ初登板がありました。
弓削 日本ハムとは春季キャンプ中の練習試合で一度対戦させてもらっていました。そこでボコボコに打たれたこともあり、勝ちたい、抑えたいという気持ちがすごく前に出てしまい、気持ちが前のめり過ぎたかな、と。それが結果とかみ合わない原因の一つとなってしまったので、反省する部分は多かったですね。
──結果は5回途中1失点。初登板の緊張はありましたか。
弓削 緊張はあまりなかったと思います。ただ、社会人やアマチュアだと、試合にスッと入っていけるのですが、プロ野球は登場するまでにパフォーマンスがあったり、音楽を流したりという時間があるので、そういったリズムに慣れるまでには少し苦労しました。やはり気持ちが高ぶってくるので、メンタル面でも多少ズレがあったのかなと感じます。
──オープン戦でもなかなか体験できないことですからね。
弓削 さらに公式戦となるとお客さんの数も違いますし、雰囲気はがらっと変わるので、そういったことへの対応が難しかったです。
──その後二軍での調整となりました。どのあたりを意識してトレーニングしていたのでしょうか。
弓削 試合の前日、前々日のトレーニングなどの調整方法を変えていきました。それまではトレーナーさんに出されたメニューを中心に調整やアップをしていたのですが、ファームでは自分でやる時間がすごく多いので、社会人(SUBARU)時代にやっていた調整方法などを取り入れるようになって、調子が良くなりましたね。やはり自分で考えて動くことが大事なんだなと。どこを意識して動かすといい形で試合に入れるのかを考える時間が多かったんです。さまざまな方法を試していく中で良かったものは取り入れて、違うなと思ったことは今までやってきたことに戻して、自分に合った調整法で試合に臨むようになりました。
──前日にブルペンに入るのもその一つだったと。
弓削 それもプロ入り前までやってきたことだったので。プロでは前日に投げている人はいなかったので、「プロってそういうもんなんだ」と最初は思ったのですが・・・
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