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優勝へ導いたベテラン力

巨人・亀井善行インタビュー “個人よりジャイアンツ”を貫いた男

 

37歳のベテランがチームをけん引した。打っては主に一番を任され、好機を演出。守っても堅実かつダイナミックな守備で投手をもり立てた。ジャイアンツ5年ぶりのV奪回は、亀井善行の存在なしには語れなかった。
取材・構成=坂本匠、写真=小山真司(インタビュー)、BBM ※本文内の年表記は2019年時点


進化ではなく大器晩成。まだ“錆びていない”


 大卒プロ15年目のシーズンを戦った亀井善行が元気だ。ほぼすべての項目で2009年のキャリアハイに匹敵する成績を残し、トップバッターとして十二分な役割を果たした。今季で37歳を迎えたが、今なお進化の途上にある。

──15年目のシーズンは充実した1年だったのではないですか。

亀井 ここ数年と比較すると、一番良かったシーズンだと思います。反省もたくさんありますけど、年間を通して一軍にいて、試合に出られた。今までやりたくてもできなかったことですからね。

──昨季、プロ14年目で2度目の規定打席に達し、今年は3度目の規定到達でした。WBCに出場した2009年に25本塁打を放つなど、レギュラーで活躍しましたが、それ以降は出場数を減らしていた中で、35歳を超えてからのさらなる進化、変化をどうとらえているのですか。

亀井 「さらなる」ではないんです。35歳を迎えるまで進化をしていなかったんですよ。ケガに悩まされたり……。それも含めて、ただの力不足なだけで、大器晩成と言いますか、若いころになかなか芽が出なかったことが、いろいろな経験を経た中で、ようやく今になって、自分らしさとして出せるようになってきたのかな、と思っています。皆さん、37歳という年齢で判断されるのはある意味、仕方がないこと。でも、若いころに試合に出ていなくて、消耗していない分、言葉は悪いですけど、まだまだ“錆びていない”んじゃないかと。だからこうやって多くの試合に出られるのかなと思っています。

──ちょっと、納得しました。

亀井 「苦は楽の種」という言葉が好きなんですけど、まさに僕の野球人生にマッチしているのかなと。本当に、若いころに苦しい経験を多くしてきて、「やっと」という感覚ですね。これからもできるんだぞというところをもっと見せていきたいなと思っています。

──今季は131試合出場、503打席に立ち、128安打、13本塁打、55打点、9盗塁で打率.284という好成績でした。

亀井 もっとシーズン中に“何か”しておけば3割打てたんじゃないかな、という思いが正直あります。昨季に関しては8月にガクンと落ちて……落ちることは良いんですが、そこからシーズン終了まで上がれませんでした。体力面、引き出しのなさを感じましたね。その反省を踏まえて、今季は7月まですごく結果が出ていて、8月はやはり落ちたんですが、9月はズルズルいかずに何とかギリギリもったイメージ。でも、同じことの繰り返しなので、8月はしっかり成績を上げられていたら3割という数字は見えたな、と。

──来季への良い課題になるのでは。

亀井 そうですね。とはいえ、メンタルなのか、技術なのか、どうすれば良かったのか、いまだ答えは出ないんですけど。8月は暑い時期で集中力も切れやすい季節。コンディションをもっとしっかり整えるべきなのかな、と考えています。

日本シリーズ第3戦[10月22日、東京ドーム]では、初回、ソフトバンクの先発・バンデンハークから先頭打者弾。第2打席でもアーチを架けた


──今季の亀井さんを語る上で欠かせないトピックスとして、「一番打者」があります。開幕は六番で迎え、その後、五番を打ちましたが、一番を打っていた吉川尚輝選手の離脱もあり5月26日の広島戦(東京ドーム)から一番に座りました。

亀井 チーム事情も分かっている中での一番なんですが、僕の中では五番と一番では全然違う感覚。「どの打順も一緒」という人もいるんですが、僕はそうは思っていなくて。「一番打者として打席に立つのは初回の1打席目だけ」というのも、今年に関しては1打席目だけではなかったです。というのも、坂本(坂本勇人)、丸(丸佳浩)、岡本(岡本和真)が後ろに控えているので、どんな状況で打席が回ってきても、一番には一番の、つまり、どんな形でも必ず出塁することが求められました。

──3人ともに25本塁打以上&85打点以上をマークした得点源です。

亀井 3人とも誰が見てもすごいバッター。岡本なんて実質2年目ですけどもう風格が出ていますからね。ホームランを打てて、打点を稼げるバッターが3人も後ろにいる。だから、一番打者の重要性は今年に関してはものすごくあったと思います。五番のときは彼らが打って、彼らをかえせばいいや、とシンプルに考えていましたけど、一番はとにかく塁に出ること。中でもどうやったら得点になるかを考えていて、その代償ではないですが、三振も増えました(18年=70→19年=91)。追い込まれてもいいから、1球でも多く投げさせよう、見極めて四球(同36→45)を取ろうと。いろいろな役割を考えていて、それに徹することができた1年だったかなと思います。

──初回先頭での打率が.324、初回以外でも先頭で打席に立ったトータルで.320の高打率です。

亀井 原(原辰徳)監督も言っていましたが・・・

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