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2019シーズン回顧

野村弘樹(野球解説者)が語る2019セ・リーグ「大型連敗が多かった“セ”で連敗を最小限にとどめたのが巨人だった」

 

巨大戦力を束ね、頂点へと導いた巨人・原監督


 5年ぶりとなった巨人優勝の大きな要因は、やはり丸佳浩の加入でしょう。打線では丸の前後を打った坂本勇人岡本和真という二〜四番が非常に機能していた。投手では最多勝のタイトルに輝いた山口俊が予想以上のパフォーマンスでシーズン終盤には菅野智之の穴を埋め、リリーフでは中川皓太が苦しいブルペンを救った。昨年途中、すい星のごとく現れた広島フランスアのように、リードした展開を何とか勝ちにつなげることができたのが大きい。抑え候補だったクックのメドが立たないとみるや、シーズン中にもかかわらずデラロサを獲得するなど、フロントの動きも早かった。

 原(原辰徳)監督は“フラット”に戦力をとらえ、指揮を執っていた印象です。つまり、ベテランもルーキーも外国人も関係なく、実力至上主義で選手を起用していた。ゲレーロには犠牲バントを命じたり、抹消もした。先入観にとらわれることなく状態のいい選手を見極め、起用できた采配がリーグ制覇へと導きました。その手腕はすごいなと感じました。

 DeNAは最後まで巨人に勝ち越せなかった。4月に10連敗しながら、よく盛り返しましたが、宮崎敏郎伊藤光のケガが痛かったです。パットンも冷蔵庫を殴って消え、巨人と首位を追う時期の離脱者が痛かった。ですから、よく2位に食い込んだなという印象です。打線でひっくり返した試合も多く、攻撃陣はよかっただけに、先発でもう2人、規定投球回数をクリアしていれば、優勝も狙えたと思います。

 接戦に持ち込んでリリーフ陣で勝利を呼び込むのが阪神の勝ちパターン。先発では新加入の西勇輝が最後までしっかり投げ切り、最終的に2ケタ勝ったのが大きかった。投手陣は素晴らしく、リリーフではジョンソンをはじめ、藤川球児もクローザーで力強さが戻った。先発が、西、青柳晃洋ガルシアに続く投手が出てくれば、来年は投手王国となる可能性もある。最終的に3位に食い込みCSファーストステージを突破したように、かみ合えば力を発揮するチーム。矢野燿大監督2年目となる来季は不気味な存在となりそうです。

 抜けた丸の穴は簡単には埋まりません。そこだけにこだわるより、それ以外の部分をどう伸ばして、勝っていくか。広島には、その考えが足りなかったように感じます。打線の負担を鈴木誠也が負わざるをえなかった。先発はそろっていたのにリリーフがダメで、クローザーの中崎翔太が機能しなかった。リードしていた試合をひっくり返されるとダメージは大きいし、それが連敗につながってしまいました。今季、逆転負けが32試合。昨年までは逆転で勝ってきたチームが、こういう展開になると厳しいです。

 中日は5位ではあったけれど、収穫のあった1年だったと思います。メンバーもそろってきました。先発投手は大野雄大柳裕也ロメロ。中継ぎのロドリゲスもよかった。野手も固定できるメンバーになってきた。内野には阿部寿樹福田永将高橋周平京田陽太ビシエドは手を抜かずにプレーするし、外野には平田良介大島洋平と実績のある2人がいる。シーズン全体では苦しんだかもしれませんが、後半はAクラス争いも繰り広げ、明るい兆しが見え始めた感じはあります。

 ヤクルトは16連敗がすべてだった。先発投手が機能せずに、中継ぎへの負担も大きく持ちこたえられなかった。厳しいチーム状況の中で村上宗隆が新しい風を吹かせてくれました。今年のセ・リーグは、どの球団も大型連敗があった。その連敗を最小限にとどめた巨人がVの座に就いたと見てもいいでしょう。



PROFILE
野村弘樹/のむら・ひろき◎1969年6月30日生まれ。広島県出身。左投左打。PL学園高では立浪和義(元中日)らと甲子園春夏連覇を達成し、1988年ドラフト3位で大洋(現DeNA)に入団。以後、大洋・横浜で左腕エースとして活躍、98年には日本一への原動力となった。02年限りで現役を引退。現在は野球解説者として活躍する。
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