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2019シーズン回顧

里崎智也(野球解説者)が語る2019パ・リーグ「打力の力で連覇。球界の常識を覆す西武の戦いぶりだった」

 

西武は強力打線の力でリーグ連覇を果たした


 プロ野球界の常識を覆す西武のパ・リーグ連覇でした。“いてまえ打線”で史上初となるチーム防御率最下位でのリーグ優勝を果たした2001年の近鉄も、翌年は優勝した西武に大差をつけられての2位に終わっています。それが今年の西武は、2年連続でチーム防御率リーグ最下位でのリーグ連覇。投手力に弱みがありながら打ち勝つ野球を継続して連覇を果たすというのは、これまでの常識では考えられないことでした。

 それでも一番大きかったのはニールの出現です。打線がクローズアップされますが、最後に11連勝を果たし、「エースで負けない」試合を作れたことが終盤でソフトバンクに競り勝てた最大の要因でしょう。増田達至平井克典というリリーフ陣の頑張りに加え、平井に疲れが見えたところで平良海馬が現れて後ろの形を維持できたことも大きかったです。

 打線は楽天へ移籍した浅村栄斗の穴をほかの選手でカバーすることができました。中村剛也の状態が良かったことは大きなプラスでしたが、何といっても森友哉です。炭谷銀仁朗(現巨人)が抜けて森が試合に出続けたことで、打線に穴がなくなりました。規定打席到達者が8人と、ケガ人を出すことなく打力を最後まで維持できたことも大きかったです。

 逆にソフトバンクは今年もケガ人が多過ぎました。ケガ人の多くが戻ってきたポストシーズンでは無敵の強さで日本一3連覇を成し遂げ、戦力では頭一つ抜けていることを証明しただけに、2年連続でリーグ優勝を逃したのは西武が強かったというよりソフトバンクが勝手に落ちたから、と言わざるを得ません。ロッテに大きく負け越したことは問題でしたが、ケガ人続出の戦力ダウンがなければそんなことにはなっていなかったはずです。来季に向けても、なぜケガ人が続出するのかを解明しない限り、同じことが繰り返される可能性があります。

 3位の楽天は先発二本柱の則本昂大岸孝之がケガや不調で不在の時期が長かったにもかかわらず、よく頑張りました。打線は浅村やブラッシュという新戦力が核となって機能し、投手陣ではやはり新顔のブセニッツ、抑えの松井裕樹などリリーフ陣が踏ん張りました。星勘定で言えば優勝した西武に対して最後まで五分以上の戦いができていたことが、最後に3位に滑り込めた要因でしょう。

 その楽天にAクラス争いで競り負けたとはいえ、4位のロッテも持てる力は十分に発揮したと思います。ただ最後まで投打はかみ合わなかった。リーグ3位の158本塁打、同2位の642得点と見違えるような打線に生まれ変わりましたが、それを勝ちに結び付けられないのでは意味がない。先発ローテは固まりませんでしたし、抑えの益田直也につなぐリリーフ陣も最後まで流動的でした。

 5位の日本ハム上沢直之の離脱が痛かった。首位に0.5ゲーム差まで詰め寄りながら8月に急降下しましたが、有原航平とともに先発の軸となる上沢がいれば、あれほどの大失速はなかったのではないでしょうか。最後は育成にシフトしたのか、勝つための策がはまらないだけなのか、戦略が見えづらい戦いが続きました。未来への種まきだったのかどうか、答えが出るのは来季以降です。

 オリックスにもAクラス入りのチャンスがありましたが、終わってみれば山本由伸榊原翼の故障離脱が響きました。ただでさえ層が薄い中で頼れる先発が山岡泰輔1人になってしまった。打線は打てる選手と打てない選手の差が激し過ぎましたが、すべてがうまく回っていれば3位に入れたかはともかく、最下位ということはなかったと思います。



PROFILE
里崎智也/さとざき・ともや●1976年5月20日生まれ。徳島県出身。鳴門工高から帝京大を経て、99年ドラフト2位でロッテ入団。2年目の2000年に一軍出場を果たすと、05年の日本一、06年のWBC優勝に貢献。10年にもリーグ3位からの下克上日本一をけん引した。14年に現役引退。現在は野球解説者として活躍中。
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