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インタビュー 球史の語り部

元大洋・稲川誠インタビュー ホエールズ、そしてベイスターズをもっとも深く知る男 「松坂大輔を獲れなかったとき、ボクは人前もはばからず、涙をボロボロ落としました」

 

大洋ホエールズを原点とする横浜DeNAベイスターズを代表するレジェンドの一人として昨春、横浜スタジアムで行われた球団創設70年記念試合[公式戦・対広島]で始球式をした。スター投手、コーチから裏方のスカウト、寮長まで務めたプロ野球人生は半世紀にわたる。その希有なキャリアが懐深く温かい人柄を陰影豊かに彩る。
聞き手=山崎博史(ジャーナリスト) 写真=稲川誠氏提供、山崎博史、BBM

昨春、横浜スタジアムで始球式を行った


約束を守ってくれた山口


──今年メジャー・リーグでプレーするノーヒットノーラン投手・山口俊(横浜・DeNA→巨人→ブルージェイズ)と「日本の四番」筒香嘉智(横浜・DeNA→レイズ)は、稲川さんの寮長時代の教え子ですね。

稲川 そうです。山口は先日、家族を連れて自宅に来てくれました。日本を離れる前に「約束を果たしておきたい」と言って。まだ全く芽が出ないころ、ボクは素質を見込んで「お前が1億円プレーヤーになったら、メシぐらいおごれよ」ってハッパをかけていた。あいつは「はい」と言い、実際に出世してから何回も「おごらせてください」って連絡をくれたんだけど、都合が合わずにいた。それでこの日、自分で周辺の店をネットで調べ、一番高級な寿司屋を予約してくれていた。そこにボクと女房を招待してくれたわけです。値段じゃなく、格別の味がしましたよ。

──寮長に感謝しているんですね。

稲川 寮時代、本気で叱ったからね。あいつは寝起きが悪くて、ある朝、起こしに行ったら、うるさがって「もう寮を出ます」なんて言った。即座に「よし。明日、出ろ」って突き放し、大分のお父さんに電話しました。「私の指導が悪く、ご子息が寮を出たいと言うので、明日出します」と。元幕内力士の谷嵐です。怒ったんでしょうね。山口はすっ飛んで来ました、「申し訳ありませんでした」って。

──山口は3年前に暴行事件を起こし、騒ぎになりました。

稲川 そうね。あいつは優しい性格で、気が弱いところがあるから。事件後、すぐに電話を入れ、「後悔はするな、反省をしろ」って言ってやりました。もうやったことは後悔してもしょうがない、だけど大いに反省をしなさいって。

──筒香は、いかがでした?

稲川 筒香については、いろいろあって話しにくいなあ(笑)。一つだけ言えば・・・

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