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ダンプ辻のキャッチャーはつらいよ

短期連載ダンプ辻コラム 第2回「江夏とのバッテリーはつらいよ」

 

阪神投手陣を陰から支えた捕手。現役生活は23年と長いが、規定打席到達は、わずか1年のみとパッとしなかった。ただ、この男の真価はそこにはない。短期連載第2回目は、プロ7年目、1968年の話だ。

江夏[右]とのバッテリーで幾多の名勝負を生んだが、普段はほとんど話さなかったという


江夏に徹底的に投げさせた外角


 当時、甲子園のラッキーゾーンにあったブルペンの主(ぬし)のような生活をやっと抜け出したのが、1968年だった。それには1人の若き左腕投手との出会いがある。

 ヒゲ辻さん(辻佳紀)と江夏(江夏豊)のバッテリーが打たれた後、捕手のヒゲ辻さんを僕と代えて、なんだか知らんが、うまくいった話が前回までだったと思います。

 そのあと、あいつの球をブルペンで捕っていたら、後ろのほうで監督の藤本(藤本定義)さんがコーチと、「ダンプと江夏、呼吸が合ってるな」って言っているのが聞こえた。もうニンマリですよ。当時のキャッチャーは、バッティングより、投手との相性が大事にされてましたからね。

 実際、その後、江夏のときに僕の出番が増え、いろいろ歴史に残る試合でも組ませてもらった。すごいのはあいつで、僕は受けてただけですけどね。ただ、今まで何十人の記者の人たちに「当時、江夏さんと何を話していたんですか」と聞かれたけど、ほとんど何も話してないんです。嘘じゃないですよ。飯を食いに行ったこともありませんから。

 ただ、1度だけ、少しだけど、腹を割って話したことがある。

 あれは試合が中止になって、室内で球を受けていたときですね。あいつが黙ってカーブをほうったんですよ。あいつのカーブは速くて、ほんの少しだけ落ちるスプリットみたいな球。こっちは真っすぐのつもりだったから、腹の下あたりにドンと当たった。ちょうどバックルがあったんで助かりましたが、当時、ブルペン捕手は防具なんてつけないから、当たりどころが悪かったら、病院行きだったと思います。

 思いついたんで少し・・・

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