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追憶のスタジアム

追憶のスタジアム 第1回『川崎球場』(1952-92) 土の匂いがし、野球の音がする球場

 

長い球史を彩ってきた野球場。形を変え、今、なお“現役”の球場があれば、さまざまな事情で“消えた”球場もある。開幕を待ち望む今、思い出の球場をいくつか紹介していく。

大洋の本拠地時代の川崎球場。巨人戦なら満員になった


感動と悲哀を生んだ“劇場”


「川崎球場の空気は澄んでいる。悲しいまでに澄んでいる」と書いたのは、直木賞作家の赤瀬川隼さんだ。一塁側スタンドに座ってゲームを見ていたらラジオの実況中継の音が聞こえてきた。

「うるさいな、音を低くしてくれ」と言おうと思ったら、ネット裏最上段の放送室からのアナウンサーの声だった。

 これは、かつて小誌で健筆をふるった田村大五さん(故人)が川崎球場について書いた原稿の冒頭だ。

 その中に「川崎球場が好きなのは、土の匂いがし、野球の音がすることだ」という赤瀬川さんの言葉と、現在の無観客試合で注目された、さまざまな野球の音にまつわる赤瀬川さんの一文の引用があった。田村さんは、それを「最高の川崎球場礼賛文だ」と書いているが、ここでは触れないでおく。今は「グラウンドの音」だけでなく、「野球に魅了された人々の声(音)」を待ち遠しく感じるからだ。

ロッテ時代の川崎球場。これは練習ではなく、公式戦の日だ


 のち、汚い、狭い、お客が来ない、と酷評されることも多かった川崎球場だが、今でも熱狂的なファンがいる。そのファンは大きく二分されるようだ。一つは、赤瀬川さんのように閑散としたスタンドで視覚、嗅覚、聴覚を駆使し、野球の醍醐味を味わったという人たち。もう一方は、なぜかドラマが多かったこの球場で、不思議な・・・

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