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2020社会人野球監督クローズアップインタビュー

渡辺俊介(日本製鉄かずさマジック監督) “魔法”の発信者 「市民球団」の存在意義と行動力 「選べる選手でないと、ゲームで自立できない」

 

「世界一低い」と言われたサブマリンが社会人の監督に就任した。かつて、大学卒業後に2年間在籍し、プロへの道を切り開いた愛着のあるチームだ。野球界に影響力の大きい新リーダーが、手腕を発揮していく。
取材・構成=岡本朋祐 写真=田中慎一郎

昨年12月上旬に新監督就任が発表。昨年まで12年間率いた鈴木秀範前監督が着けていた「31」はロッテ時代にも背負った愛着ある数字だ


 2020年の社会人球界は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、公式戦の中止が相次いだ。各チームとも、秋の都市対抗二次予選へ照準を合わせている。日本製鉄かずさマジックは昨年、社会人で「2大大会」と言われる都市対抗と日本選手権の出場を逃した。今年の南関東二次予選(10月2日から6日間、埼玉・県営大宮)から本戦への出場枠は「3」。例年はJFE東日本、ホンダ、日本通運を含めた計4チームで激しい予選が繰り広げられるが、今年は様相が異なる。前年大会を初制覇したJFE東日本は「予選免除」の権利があり、推薦出場する。傍(はた)から見れば「やや緩やか」に映るが……。

「現場を預かる当事者としては『3/4→3/3』という意識は、まったくありません。(二次予選の出場は6チームで)その枠を、虎視眈々と狙ってくるチームもある。『行って当たり前』という中でのプレッシャーもありますが、自分たちは日本一を目指しているのであって、選手の中にも『出られればいい』という感覚は一切ないです」

 東京ドームの本戦切符(11月22日開幕)をかけた都市対抗南関東二次予選は、過密日程を戦い抜くだけの心身のタフさが必要だ。最後の1枠となった第3代表決定戦(対日本通運)で敗れ、予選敗退となった昨年は、7日間で5試合を消化。2年間在籍した現役時代(当時は新日鐡君津)を通じて、渡辺俊介監督にとって、最も厳しい修羅場だという。

「日本シリーズ、WBCにも特別な緊張感とプレッシャーがありましたが、都市対抗二次予選のマウンドには(会社と地域を背負っていく)種類の違う、重たさを感じるんです」

影響を受けた4人の恩師&師匠


 世界一低い、と言われたアンダースローはロッテでNPB通算87勝を挙げた。05年には日本シリーズで優秀選手賞を受賞し、31年ぶりの日本一。10年にもシーズン3位からの日本一に貢献している。大会連覇を遂げた06、09年のWBCでは日の丸を背負った。13年限りで退団し、14年以降はアメリカ独立リーグやベネズエラでプレーした。帰国後、さまざまなカテゴリーからオファーがあった中で選んだのは社会人野球である。「一番、ワクワクするのはどこか」が判断基準だったという。投手兼任コーチとして古巣に戻り、昨年まで12年率いた鈴木秀範前監督を支えた。昨年からはコーチ専任。日本選手権関東最終予選敗退後に監督就任の要請があり、12月2日に発表された。

「4年間、チームを見てきまして、いま、かずさマジックをどう、盛り立てていくか? 覚悟を決めてやることが最善の選択かな、と。私が選手として在籍していたころ(当時、新日鐡君津、企業主体)とは、野球部の体質が変わりました。地域密着型の広域チーム(03年から市民球団かずさマジックとして活動開始)。地元を巻き込んだ、ほかにはない形で運営してきました。『市民球団』の役割がより求められ、期待も大きい。それは、コーチ時代にも感じていたことです。ライブ(現場)においてはチームを強くする、勝利の使命がありますが、私の周りには、頼りになる優秀なコーチがいます。社会人野球界はここ数年で組織全体として工夫し、PRの方法も変わってきている。私としても、可能な限りの情報を発信したいと思います」

 理想の監督像がある。共通しているのは「対話」を大事にすることだ。

「竹田監督(竹田利秋、国学院大元監督)とボビー(ボビー・バレンタイン、ロッテ元監督)の選手へのアプローチの仕方が参考になっています。頭ごなしで、指示することはありませんでした。選手に考えさせ、答えを見つけさせるのが、基本スタンスです。お2人とも、言葉で伝えるのが上手。社会人で2年間指導を受けた應武さん(應武篤良、現崇徳高監督)も、選手との対話が多い方でした。プロで生きていく精神的な部分をたたき込まれ『何が何でも勝つ!』と姿勢も学びました。私も選手に選ばせることを大事にしています。

 ベースがない選手については、基本から教えていかないといけませんが、例えば・・・

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