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2020年夏検証リポート

「夏の甲子園」で何があったのか!? 一投一打にかけた「各校1試合」の情熱

 

2020年甲子園高校野球交流試合が8月10日、阪神甲子園球場で開幕し、前・後半で計6日間の日程で行われた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、3月の第92回選抜高校野球大会が中止。代替措置として、出場校32校を招待し、各校1試合が提供された。感染予防対策が講じられた無観客試合。大きく形を変えた「夏の甲子園」を検証していく。
取材・文=岡本朋祐

8月10日の開会式は第1日第1試合の大分商と花咲徳栄のみ参加。両校の主将が選手宣誓を行った。他の招待校は大型ビジョンに集合画像が映し出された/写真=牛島寿人


 交流試合開催にあたり、感染予防策のため、移動を最小限に抑えた。遠方の招待校であっても、最大でも2泊3日。試合前日に宿舎へ入り、翌日に試合を行い、翌々日に帰る。近畿の学校は日帰りだった。倉敷商高は甲子園(兵庫県西宮市)から近隣の部類に入る岡山という状況もあってか、強行軍。試合前日(8月14日)の昼過ぎに学校を出発した。仙台育英高との15日の第3試合(6対1で勝利、終了18時23分)を終えたその足で、バスで地元へ戻った。現地での滞在時間は24時間にも満たなかった。つまり、15日朝には、荷物をまとめて宿舎を出ていたのである。

 宿舎では外出禁止。一人部屋が確保され、大勢のミーティングも行わず、自室で過ごすように指導された。食事も対面ではなく、横一列に並んで、会話は慎む。倉敷商高OBの岡山県高野連・野間貴之理事長は言う。

「こういう状況の中で開催していただき、ありがたい。1試合だけでも、できるのとできないのは大きく違います。やらせていただけるだけで十分です」

倉敷商高は仙台育英高との交流試合を6対1で勝利。持ち味を発揮しての校歌は格別だった。試合後にその足で岡山に戻った/写真=毛受亮介


 第102回全国高校野球選手権大会の79年ぶり中止に伴い、甲子園に紐づく49地区の地方大会も中止。全国47都道府県高野連では地方大会に代わる「独自大会」を開催した。野間理事長は岡山県高野連が主催する「2020夏季岡山県高等学校野球大会」の運営に尽力。現場で陣頭指揮を執った立場として、今回の甲子園交流試合で喜ばしいことがあった。

「控え部員に加え、部員1人につき保護者・家族5人の入場が許可されました。岡山は2人でしたが、甲子園というキャパによって、対応してくださったのだと思います。プロ野球は8月末まで観客上限5000人で実施していますが、アマチュアスポーツでは、大きな決断であったと思います。また、指導者の家族5人も入場できたのはありがたかった。野球部長、監督、コーチ、顧問も一緒に生徒と戦っています。常日頃から苦労をかけている家族も、甲子園で観戦できる。(指導者の)子どもたちにとっても良かったと思います」

 約500人の保護者・家族はバス30台で来阪。ゆとりを持って座った。主催者が指定する招待人数は30人のため、控え部員もバスで甲子園に来場した。学校関係者席は内野席の上部に設置された。人と人との距離を十分に保ってマスクを着用して座る。飛沫防止のため、声援は自粛され・・・

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