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阪神・藤浪晋太郎 技術はメンタルを凌駕する 「自分の感覚が大事。そう確認でき、良かったときの自分に戻ろうと決められた」

 

誰もが認める才能がある。しかし結果がついてこない日々。輪をかけて新型コロナウイルスに感染するなど、野球以外でも話題になった。それでも「自分を信じ」続け、692日ぶりに通算51勝目を挙げた。ここからは勝ち続けていける自信がある。なぜなら、つらい日々も練習で体に染み込ませた、確固たる投球フォームがあるからだ。
文=佐井陽介(日刊スポーツ新聞社) 写真=小山真司、早浪章弘

8月21日のヤクルト戦(神宮)で692日ぶりに勝利を挙げた藤浪。気迫の投球での1勝だった


苦しいことばかり……


 その瞬間、長過ぎた苦闘の日々が走馬灯のように脳裏を駆け巡ったのかもしれない。藤浪晋太郎は実に692日ぶりの白星を手にした直後、久方ぶりのヒーローインタビューで偽らざる本音を吐露した。

「苦しいことばかりだった。つらいことが多かった。コツコツやるしかないと思って、毎日毎日、練習してきました」

 8月21日の神宮球場。左打者6人を並べたヤクルト打線を相手に7回途中4失点と耐えた。九番打者としては2回表、三塁への適時内野安打でチーム38イニングぶりの得点をもたらす。リードを4点に広げた直後の2回裏に失策、三振捕逸、犠打野選で2失点。それでも6安打3四死球と大崩れしなかった粘り腰に注目すべきだ。制球難からガタガタと崩れ落ちるここ数年のイメージを、藤浪は徐々に塗り替え始めている。



 今季一軍初先発は7月23日広島戦(甲子園)。この一戦から粘投報われず4戦4敗と苦しんだ末、5戦目でようやく復活星をゲットした。とはいえ、防御率3.78は試合を作れているレベル。4敗のうち3敗は打線の援護に恵まれず、守備陣のミスも絡んで負けたものだ。6回6失点と荒れた8月14日の広島戦にしても、もともと苦手にしている京セラドームが舞台だった。

 150キロを常時超える直球には球速以上の強さがある。以前は「どうしてもボールゾーンに投げようとしていた」というスプリットにしても、ストライクゾーンで次々に空振りを奪えている。何より、3ボールからでもカウントを整えられるようになった制球の安定が印象深い。

 絶不調時からの変化はデータを見れば一目瞭然だ。まずは藤浪が先発ローテを守っていた2013年から16年までの4年間を見る・・・

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