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秋山思考 The Thinking!

秋山翔吾コラム 「メジャーでのバッティングの変化」

 

9月に入り、バッティングの状態は上がっている


本能的に体が前に出されてしまうことへの対応


 早くも公式戦の終わりが近付いてきましたが、ここにきて自分の中でバッティングの感覚が変わってきました。前回のコラムで書いたとおり、開幕からメジャー・リーグの投手が高めに投じる強いストレートにどう対応し、アプローチすべきか考えていました。もちろん、世界最高峰の舞台で簡単に成功できるなんて思っていなかったですし、何とか悪い状況にアプローチしようと小さな変化を重ねましたが、なかなかうまくいきませんでした。このままではまったく結果を残せずに終わってしまう。打撃コーチにも相談した中で、こうなったら何かを捨てて思い切って変化しないといけないだろうという結論に達しました。

 それは僕にとって革命的な大きな変化──。足の上げ方と始動のタイミングを変えたんです。僕のバッティングの原点はしっかり足を上げて間(ま)を取るというスタイル。メジャー流でいうと“レッグキック打法”です。特に僕は足を上げている時間が長いほうでした。足を上げて軸足に体重を乗せ、その力を下半身から上半身、バットへと連動させていきます。そのために頭を動かさずに、そのまま足を下ろし、軸回転でボールをとらえていく。しかし、メジャーではそこが崩されてしまいました。

 メジャーの投手と対戦を繰り返すうちに、前述の強いストレートに対するためにはスイングに体ごとぶつかっていかないと打ち返せないと本能的に思ってしまったのでしょう。体が前に動くようになっていました。練習では「それではいけない」と分かっているんですが、どうしても試合では60、70%に抑えたいスイングが100%近い力で振るような感覚になって、それが力みにもつながってしまいました。

ダルビッシュの内角高め直球を右前打


 足を早めに上げて「いらっしゃい」という状況を作って投球に対したいのが、逆に自ら投手との距離を縮めてしまう動きをしてしまう。それでは打てないのは必然でした。そうであるならば、いっそのこと足を上げるのを遅くしてタイミングを取ってみれば、と。今までは投手が足を上げると同時に僕も足を上げていましたが、それを投手の足が下がるタイミングで足を上げるようにしてみました。もう少し細かく説明すると、ステップ幅を広めに取るようにして、すり足で始動して、足を少し引いてから上げるという形です。これは僕にとってクイックに対応している感じで、最初は「大丈夫かな」と思ったんですが、この打法にしてから下半身に粘りも出てきて、スイングとマッチし始めました。

 それがちょうどダルビッシュ(ダルビッシュ有)さんとメジャーで初めて対戦した8月29日(現地時間)、シンシナティでの対カブス戦でしたね。6回の第3打席でダルビッシュさんから初球見逃し、3球ファウルでカウント0ボール2ストライクと追い込まれてからの5球目に内角高めのストレート(96.5マイル※155キロ)を右前に打ちました。これが日本時代を含めてダルビッシュさんからの初安打でしたが、あらためて映像を見て、今まで苦しんでいたコースの、強いストレートを打ち返すことができ、この1本が僕にとってコース、速さを確認できた大きなヒットだったと思います。

 その試合以降、次の打席につながる、手応えのある打席が増えてきました。それまでは体を前に出されて、ツーシームやチェンジアップを引っ掛けて二ゴロになっていました。ストレートも左肩が出ている状態で打っているから二ゴロが多くなっていました。西武時代からですが、二ゴロは僕にとって不調のサインで三振と同じくらい落胆してしまうアウトでした。それが逆方向への納得のいく凡打が増えてきたので、下半身の使い方を変えて、ようやく逆方向に打球が飛ぶバットの面になってきた、と。ファウルにできるような打ち方もでき、それが粘りにつながり、自分で勝ち取った四球も増えてきたと感じています。

子どもの涙を見て決意を新たに


 守備の話も書きましょう。打球への“寄り”は日本人選手のほうが速いと思いますが、やっぱりメジャー選手の肩は抜群ですね。“寄り”は遅いですけど、肩の強さで十分に補っています。

 ミルウォーキーで行われたブリュワーズ戦(現地8月27日)では5回に一死から四球で出塁して、次打者カステヤノスのセンター越えの二塁打で一気にホームを突き懸命にスライディング。中堅・ガルシア、遊撃・アルシアと中継され、最初はアウトと判定されましたがチャレンジの末、セーフ判定に覆りました。実況の方も「アキヤマのナイススライディングだ!」と褒めてくださったそうですが、そもそも僕は打球や外野手の追い方を見てギリギリのタイミングになるなんて思っていなかったんですよ。だから、センターからショート、ショートからキャッチャーへの送球がとてつもなく速いんだなとあらためて感じました。

現地9月17日現在、レッズはナ・リーグ中地区2位だが、最後までプレーオフ進出をあきらめない


 メジャーでプレーして、いろいろとモチベーションになることはありますが、その大きなものの一つはやっぱり家族の存在です。コロナ禍での自粛期間を経て、8月から子どもたちの学校も始まりました。下の子は幼稚園生なんですが朝、奥さんの手から離れるとき、嫌がって大粒の涙を流すんですね。英語の幼稚園しかなく、そこに通っていて、言葉の通じない中で心細さもあるんでしょう。

 秋山の子どもに生まれたことにより、親の都合で慣れない環境に放り込まれる。もしかしたら、僕よりも苦しんでいるんじゃないかなと思います。父親として申し訳ない気持ちもありますし、将来、アメリカでの生活が経験できて良かったと思ってもらえるかもしれないですけど、僕としては家族に「何しにアメリカに行ったの?」と言われないように、しっかりと結果を残さないといけないと決意を新たにしています。とにかく、まずはシーズンの最後まで一瞬一瞬をムダにせず過ごしていきたいですね。

PROFILE
あきやま・しょうご●1988年4月16日生まれ。神奈川県出身。184cm85kg。右投左打。横浜創学館高から八戸大を経て2011年ドラフト3位で西武入団。プロ3年目にフルイニング出場を果たし頭角を現すと、15年にシーズン最多の216安打をマーク。17年春のWBCには侍ジャパンの一員として出場した。20年からはMLBレッズへ。主なタイトルは首位打者(17年)、最多安打(15、17〜19年)、ベストナイン(15、17〜19年)、ゴールデン・グラブ(13、15〜19年)

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