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新天地で輝く TRANSFER PLAYER INTERVIEW

オリックス・能見篤史インタビュー 納得の答え 「自分が納得するためにも、準備だけは欠かせない」

 

1年前は引退も覚悟していた。でも、衰えは感じない。体はまだ動く。だから、マウンドに立ち続ける。自らが納得する答えを出すため阪神を自由契約となった今年42歳のベテラン左腕はオリックスへの移籍を決断した。
取材・構成=鶴田成秀 写真=佐藤真一、BBM


引退覚悟で挑むも「やり切れてはいない」


 自由契約となっても、現役にこだわったのは確かな理由がある。昨季の開幕前には引退の二文字も意識していたというベテラン左腕だが、それは自らが納得する結果が出た上でのこと。新型コロナの影響で、プロ野球界も大きく揺れ動いた2020年──。不測の事態だっただけに完全燃焼することはできなかった。オリックス移籍の決断の思いをひも解けば、投手としての“生き様”も見えてくる。

──昨年12月は、例年になく慌ただしい1カ月だったと思います。

能見 そうですね。でも今、こうして21年シーズンにプレーできる場をいただけた。もう感謝の言葉に尽きます。

──阪神を自由契約となってオリックスへの入団を決めたわけですが、移籍の決め手は何だったのでしょう。

能見 いち早く声をかけていただいたことが一番です。それに活動拠点が同じ関西。自宅から通えるという環境があまり変わらないことが大きかったです。

16年間プレーした阪神に別れを告げ、新天地で挑む今シーズン。今年42歳を迎えるも、昨季最終登板では149キロを計測と衰えを知らない


──昨年、鳥谷敬選手のロッテ入団が決まったのは3月に入ってから。移籍先がなかなか決まらない可能性もゼロではなかったと思います。

能見 すぐに決まらない、という覚悟は、当然持っていました。基本線としては、NPBでプレーしたいという思いがあって、1月いっぱいまでに声がかからなければ、そこでもう一度考えよう、と。いろんなことを覚悟していただけに、オリックスが早くに声をかけていただいたことは本当にありがたかったし、本当に感謝の言葉に尽きます。

──オリックス入団が発表された直後から、球団施設で自主トレを開始。新シーズンへの思いも感じ取れます。

能見 昨シーズンが終わったのが例年より遅い11月だったので、体を休めたくないというのがあるんです。シーズンが終わるのが遅かったということは、オフの期間も短くなるので、体を休めたくない、というか、すぐに動けるような状態を目指してオフを過ごしているんです。

──オフが短いからこそ「しっかり休む」という選択肢もあると思いますが。

能見 人それぞれですよね。例えば、体のどこか、肩やヒジなど気になる個所があれば、休んだほうがいいのかもしれない。でも、僕の場合は、それがないんです。体は元気だし、昨年もシーズン終盤のほうが、しっかり体が動いたし、元気だった。良い形で体が動き始めていたんです。その動きを継続したいという思いがある。幸いなことに、本当に体が元気なんですよ。だから、今シーズンも、しっかり動けるようにしたいな、と。

──自由契約となっても、現役続行を選択したのは、やはり「体が元気なこと」が最大の理由でしょうか。

能見 はい。体が元気だから、昨シーズンが終わった段階では、現役をあきらめる、という考えにはならなかった。それに、昨シーズンで完全燃焼できたかと言えば……。昨年は新型コロナウイルスの影響があったのが大きかったというか、シーズンを通してプレーできたとはいえ、コロナの影響で開幕も遅れ、納得のシーズンだったとは言えない部分があるんです。もし昨年、開幕が遅れずシーズンをまっとうしていたら、自由契約となる前に、自分自身で引退する決断を下していた可能性もあったと思います。

昨年12月18日のオリックス入団会見の席でも「感謝」の思いを口にし、さらなる飛躍を誓った


──引退の可能性もあった!?

能見 やっぱりコロナの影響で、昨年は不完全燃焼なんです。やり切ったか? と自分自身に問うと、やっぱり答えは「やり切れてはいない」になる。昨年はキャンプから投げ込んで「結果が出なければ終わりかな」という覚悟も持って、挑んだシーズンでした。そうして開幕に向けて調整を続けていた中で、コロナで開幕が遅れて。練習の自粛期間もあって、3週間くらい、体を動かすことができず、キャンプから積み上げてきたものが、一度、なくなってしまったんですよね。練習を再開させ、2週間後くらいに開幕となりましたが、やっぱり(状態を上げることが)間に合わなくて……。そうしたこともあって、自分の中では完全燃焼できていないんです。

──このオフも「動ける体を維持したい」というのは、その経験もあってのこと。

能見 そうですね。練習自粛となって状態が上がらなかった経験があるから、今(オフ)は動ける体を維持したいという思いになっているのは確かですね。でも、昨年も初めての経験だったので、悔いが残っているというより、あの経験を次に生かしたいという思いが強いんです。もともと休みたくないタイプというのもありますけどね。でも、(体が)壊れたらあきらめもつきますが、やっぱり体は元気なんですよ。だから・・・

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