どんな選手であっても、プロへの道程において多くの教えを授かった「恩師」と呼ぶべき存在がある。今年でプロ4年目を迎える山本拓実にとって、高校生活の3年間はプロへの大きな飛躍の時期となった。公立校からのプロ入りは後輩にも良い刺激を与えている。野球部監督、担任も務めた市西宮高・吉田監督が振り返る。
取材・構成＝牧野 正　写真＝BBM


　第一印象というのは見てのとおりです。とても小さいなと。でもいくつかの学校を見た中から、うち(市西宮高)を選んで受験してくれたようです。公立校ですから野球推薦があるわけではありません。縁があったのかなと感じるのは、山本は西宮市の隣りの宝塚市出身なんです。山本が受験した年から入試の制度が変わり、他市からも受験できるようになりました。それまではできませんでしたから、そういう巡り合わせはありましたね。

　中学時代は内野手もやっていたようですが、うちでは投手一本でやりたいということでした。僕は1年生と3年生のときに担任もしていましたが、入学当初から「将来の夢はプロ野球選手になること」だと言っていました。そこは最後までぶれませんでした。私としては「そうか、頑張れよ」と言うしかない。まさかプロに行くような投手に成長するとは思ってもいませんでした。

　ただ、体は小さいですけど、投げっぷりが良く、向かっていく気持ちは当時から際立っていました。それでも1年生の夏はベンチ入りしていません。そのころはまだ120キロほどのスピード。体が出来上がってくれば楽しみだなという程度の投手でした。1年秋からベンチ入りし、そこから徐々に伸びていったように思います。

　体を大きくしなければとは・・・