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ダンプ辻のキャッチャーはつらいよ

ダンプ辻コラム 第54回「僕も脇役となった江夏と王さんの名勝負(前編)」

 

奪三振新記録を王から奪ったシーン


バレていた江夏のクセ?


 どうしちゃったんですかね。巨人からヤクルトに移籍した田口(田口麗斗)です。去年は、打者の打ち気を見て、ひょいと力を抜いて投げることもできたのに今年はまったくできてない。もったいないな。以前、「いいときは江夏(江夏豊阪神ほか)に似たピッチングができている」と話しましたよね。これじゃ、江夏に怒られそうです。「どこがワシと似とるんや! 似とらんやろ!」って(笑)。

 似てると言っても、球の速さはまったく違いますけどね。阪神時代の江夏の球は、速いどころじゃなかった。江川(江川卓。巨人)よりは遅かったけど、あいつの場合、速いだけじゃなく、全部違う球なんですよ。1球1球、力を抜いたり入れたり、同じコースへの真っすぐでも全部違う球。そのうえで、誰も知らない120%を出させるプラスアルファのサインもあって、それで投げると誰も打てなかった。特に昭和43年(1968年)ですね。このサインで打たれたことは一度もありません。

 江夏は当時、真っすぐとカーブしかなかったけど、腕の振りはまったく変わらない。カーブは独特でね。たぶん腕の振りが速過ぎて曲がる前にキャッチャーまで来ちゃうのかな。あまり曲がらんし、球に回転がかかってないんですよ。バッターからしたら真っすぐと思って待つと、最後、すっと落ちる。長嶋(長嶋茂雄)さんからは「いいフォークだね」とよく言われました。

 ただ、実は少しだけフォームにクセがあった。猿木(猿木忠男)というトレーナーに「真っすぐ、カーブが分かるよ」って言われた。あいつ、グラブと一緒に、偉そうに(笑)体を反らして腕を上げていくでしょ。そのときグラブが少し丸くなったらカーブだって。言われてからじっと見ていたら、・・・

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