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東京2020オリンピック PLAYBACK INTERVIEW

オリックス・山本由伸 熱投の裏に「フォークのサインなら僕は首を振らなかった」

 

開幕戦、そして宿敵・韓国との準決勝と大一番を託された日本のエースは、最速157キロのスピードだけではなく、頭脳でも海外の強打者をあざ笑った。好投の裏にあった確かな意識。歓喜の金メダルから2週間が経ち、あの熱投を振り返る。
取材・構成=鶴田成秀 写真=JMPA

大舞台で堂々たる投球を見せ「心は熱く、頭は冷静に」を体現した


五輪で投じた唯一のスライダー


 オリックスで腕を振る中でも口にするのが「心は熱く、頭は冷静に」。勝利を期してマウンドに立つ中で、自分を失っては結果はついてこない。「緊張することは悪くない。緊張しても、しなくても大事なのは準備をすること」と言う右腕は、五輪の大舞台でも変わらぬ姿を見せた。ドミニカ共和国との開幕戦、宿敵・韓国との準決勝の2試合で先発と大役を託された中で、1球しか投じなかったスライダーの意図が冷静さを物語る。

──五輪の直前合宿では「外国人選手が相手になるので、シーズンとは攻め方が変わるかもしれない」と言っていました。ただ、ストレートにカーブを織り交ぜてカットボール、フォークで打者を牛耳る投球はシーズンと大きく変わらなかった印象です。

山本 持っている球種が増えるわけではないので、そこまで大きく変わることはなかったですが、ドミニカ共和国との開幕戦では高めを多く使いましたし、韓国戦は多くインコ―スを使いました。もちろん、配球に関しては、バッター1人ひとりのタイプにもよるんですけど。ただ、その国のバッターの特徴というか、タイプもある。狙い球も全然違ったので、意識して多く使った「コース」は、あったんです。

──捕手の甲斐拓也選手(ソフトバンク)と話し合いながら決めたことですか。

山本 はい。話し合って決めました。どのコースを意識していこう、と。

──高めで言えば、パワーがあり一発がある外国人打者に対して「甘く入ったら」という怖さはなかったのでしょうか。

山本 いや、高めとは言っても、いろいろあるので。狙う位置にしっかり投げれば大丈夫と思っていましたし、それを投げることで、その次以降のフォークだったり低めを振ってくれる。高めだけを意識しているのではなく、その次のボールを生かすことも考えて、しっかり狙った位置に投げれば大丈夫、という考えでした。高めを多く使うけど、高めだけで勝負するわけではない。なぜ、高めに投げるかの意図をしっかり持って投げれば、思い切りいくことができる。だから、怖さという感覚はなかったです。それが良い結果につながったと思います。

──甲斐選手は「9イニングを考えて、あえて弱いコースの逆を使うことも大事にしていた」と言っていました。

山本 韓国戦は特にそうでしたね。甲斐さんは・・・

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