昨年も多くの選手が野球人生に終止符を打つ決断を下した。野球を愛し、球界を盛り上げた男たち。白球にかけた、尊い野球人生を振り返っていく。 文=佐井陽介[日刊スポーツ] 昨季も出番は少なかったが、決して準備は怠らなかった
なぜ、毎日早朝から体をいじめ抜けるのか。なぜ、重傷を負ってもグラウンドに立ち続けるのか。
阪神のスター遊撃手だったころの
鳥谷敬であれば、例え話の中に本心をこっそり埋もれさせたものだ。
「そりゃあ、休みたいよ。でも……自分はすぐサボっちゃうタイプだから。学校にしたって1日休んだら、次は頑張らなきゃ行く気になれないでしょ?」
そう冗談めかしていた日々が懐かしい。
勝負師としての鉄仮面を外した今ならば、偽らざる本音を堂々と明かすことができる。
「自分は打撃や守備がズバ抜けているわけでもなければ、足が速いわけでもなかった。毎年新しい選手が入ってくる中、自分よりも能力を持った選手が代わりに出ることへの恐怖があった。だから、出続けるしかなかった。人より劣っているものがたくさんあれば当然、練習しないと追いつくことも追い抜くこともできない。自分に足りないものを考えたら、毎日練習するしかなかった」
18年間の現役生活で積み上げた安打数は2099本。1939試合連続試合はプロ野球歴代2位の偉業でもある。輝かしい記録の数々は「その日その瞬間、自分ができるベストを探してやり続けた結果」。それは弱肉強食の世界で居場所を失わぬよう、懸命にあがき続けた末の勲章に違いなかった。
早大2年春に東京6大学で三冠王に輝き・・・
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