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田中大貴のMonthly Column

田中大貴コラム 『松坂世代』あの夏から24年目の延長戦 「松坂恭平は野球を、スポーツを通して人々を豊かにする。松坂兄弟の運命であり、使命」

 

兵庫・小野高、慶大で活躍し、東京六大学リーグ戦では早大・和田毅(ソフトバンク)と真剣勝負を演じた元フジテレビアナウンサーで現スポーツアンカーの田中大貴は、1980年生まれの「松坂世代」の1人。そんな野球人・田中が、同年代の選手たちをプロ野球現場の最前線で取材した至極のエピソードを、コラムにして綴る連載最終回の特別編です。

写真は四国IL/愛媛時代[写真提供=渡部敦子]


兄は目標でライバル


「ここまで壊れていたのかよ……」

 兄の現役最後の雄姿を見つめながら、弟は心の中でこう呟いたと言います。同時に背番号18をまとう右腕へ向けて、込み上げてきた想いは「お疲れさま」の一言でした。

 今回が本誌誌面(今後は不定期で週刊ベースボールonlineで掲載)では最終回となる『松坂世代〜あの夏から24年目の延長戦〜』。2018年から始まった当連載のラストは、特別編として、松坂大輔を誰よりも近くで見てきた実弟・松坂恭平の登場です。彼が怪物と呼ばれた兄を、そしてその兄とライバル関係を築き、影響を受けた“松坂世代”をどう見てきたのか。兄弟・家族にしか分からない物語です。



「皆さんに引退を発表する前に、兄から電話をもらいました。現役を引退すると聞いたとき、『ついにこのときが来たか』と思いました。父も母も『お疲れさまでした』と。皆が同じ心境だったと思います」

 弟・恭平は兄の背中をずっと追ってきたと言います。都立篠崎高校を卒業後、名門・法政大学硬式野球部でプレーし、その後は兄と同じプロの世界を目指して社会人のクラブチーム、四国アイランドリーグplusでも野球を続けました。そして現在は大手スポーツメーカーのブランドマーケティング部でスポーツ・野球に携わっています。

「兄は常に目標でライバルでした。野球をしていたときも、野球をあきらめて社会人になってからも、この思いは同じです。僕は兄の恩師である横浜高元監督・渡辺元智さんの“人生の勝利者たれ”という言葉が好きでした。プロ野球選手になれなかったからといって人生は終わりではなく、長い人生、これからも目標を持ってひたむきに生きていくという意味合いが込められています。だから、この先も兄は人生の目標でありライバルであり続けると思います。ここに勝った負けたはないと個人的には考えています」

 松坂兄弟にとって「“野球”が人生のすべてをつくり上げてくれた」と言います。家族、友人、知人もすべて野球が引き合わせてくれたものであり、人生のすべてになっていると恭平は語ります。

「兄との一番の思い出は・・・

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