週刊ベースボールONLINE

2022早慶監督対談

小宮山悟(早大監督)×堀井哲也(慶大監督) 対談 「一球入魂」と「エンジョイベースボール」の神髄 神宮で激突するライバル指揮官の指導論

 

慶大は1888年、早大は1901年に創部。2校が初めて対戦したのは1903年11月21日であり明治、大正、昭和、平成、令和と歴史を刻んできた。良き好敵手であり、良き仲間。日本の学生野球界を紡いできた伝統校を率いる両監督が、本音で語り合った。
取材・構成=岡本朋祐 写真提供=慶應義塾体育会野球部、早稲田大学野球部

100年以上の歴史がある名門校は、伝統を守るだけでなく、同時に革新を進める。WASEDAとKEIOのユニフォームには重みがある


この3年で変わった学生気質


――コロナ禍の部運営も3年目です。

堀井 いつ、どういう流れでアクシデントが降りかかってくるか分からない恐怖心、プレッシャーの中で過ごしています。年明けのスタート後に感染者が出て、野球部だけではなく、体育会全体としても、しばらく活動がストップ。学生は個々で取り組み、私も定点チェックをしてきましたので、調整面において、そこまでの大きな影響はないと思います。感染予防対策を徹底した上での野球。それが、当たり前になった感じです。

小宮山 局面によっての対応策など、すぐに行動に移せる状況になっています。1月中旬に保健所からクラスターの認定を受け、活動停止。そこまで深刻な状況でなく、陰性確認、隔離期間などを経て練習を再開し、人との接触を最小限にして、メニューを組んでいます。われわれは大学の野球部ですので、大学からの指示に従って動きます。3月に予定していた沖縄キャンプは中止。状況を見極めるのも一つの手かとは思いましたが、早めに決断し、次の段階へ移ったほうが学生も動きやすいか、と。寒い東伏見(安部球場)で練習します。

堀井 強くなりますねえ……(笑)。

小宮山 いえ、いえ……(笑)。堀井さんから「当たり前になった」とお話がありましたが、現状は本来の学生野球の姿ではありません。授業はオンラインが基本で、一般学生とキャンパスで接点を持つことがない。大学へ足を運ぶことにより、野球部員である自覚が芽生えると思いますが毎日、同じメンバーとしか顔を合わせない。われわれの感覚で言う「学生」とは雰囲気が違うのが正直なところですが、この状況なので仕方ないです。

堀井 新3年生以下は、キャンパスライフがほぼできていない。本質的な勉強と野球との両立とは違うスタイルかもしれませんが、その中でベストを尽くすのが大切だと思います。

――東京六大学リーグ戦はコロナ禍で、2020年春は再延期した末に8月開催(1試合総当たりの計5試合)。同秋以降は昨秋まで、従来の勝ち点制(2勝先勝)ではなく、各校10試合のポイント制(勝利=1.0、引き分け=0.5)で行われています。

堀井 2年前の春は、当時の4年生が喜びましたよね。多くの関係者のご尽力により、舞台を整えていただけた。2、3年生にとっても2020年春はそこしかありませんので、精いっぱいのことをやったと思います。

小宮山 春の開催は不可能な状況も、夏に何とかできないか? と皆さんで協議しました。東京六大学がここであきらめず「やれば、できるんだ」と、他の全国25大学連盟へ示す使命感だけだったと思うんです。真夏の厳しい気象でしたが、各校の頑張りの賜物。世の中全体が後ろ向きになっていたところで、計15試合を完遂できたのは大きな意義だったと思います。

――昨秋は法大が開幕前のクラスターで活動停止。開幕を1週延期し、日程変更(9月の法大のカードを10月に再編し、予備日の火、水曜日にも消化)で、6校で開催されました。

堀井 昨年9月9日の理事会(本来の開幕は同11日)を思い出します。完全なコンディションは難しいかもしれませんが、法政さんが戻ってくる状況を見た上で、日程を変更しましょう、と。部長、監督以下、5校の理事全員の一致した意見。重い決断だったとは思いますが、30試合の全日程を終えることができ、感動しました。

小宮山 東京六大学野球連盟ということなので、6校で運営するのが大前提。仮に法政サイドから出場辞退という話があれば別ですが、何とか出場したいという意向でしたので、全員で知恵を出し合えば、何とかなるだろう、と。日程面でしわ寄せがくる大学もありましたが、(開幕から5週連続で組まれた)東大・井手(井手峻監督)さんにいたっては「やりましょう!」と即決でした。6校で展開するのが正しい姿だと見ていました。

――今春の運営方式は3月11日の連盟理事会で協議されるそうですが「やれるならば、勝ち点制」という基本方針があると聞いています。

堀井 歴史をひも解けば、1903年に行われた第1回の早慶戦からスタートし、対抗戦から発展した東京六大学リーグですが、いつの時代も「対抗戦意識」が根付いています。勝ち点制というシステムは、世界的に見ても例を見ない素晴らしい決着の仕方だと思います。大学野球の公式戦は年間でも多いほうではありませんから、神宮球場で試合をさせていただけるのは、学生にとって財産です。この伝統は残してきたいですし、早く通常の社会に戻ってほしいです。

――昨秋までは「9回打ち切り」の規定で、引き分けが計10試合ありました。慶大は4勝1敗5分(勝率.800)、早大は5勝2敗3分(勝率.714)。ポイントは6.5で並ぶも、勝率で慶大が春秋連覇を遂げました。

小宮山 開幕前の申し合わせ事項であり、それについては・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

HOT TOPICS

HOT TOPICS

球界の気になる動きを週刊ベースボール編集部がピックアップ。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング