1年春から、チームは正捕手として迎え入れた。常に前向きな栗原陵矢が、試合中に流した涙。あの日をきっかけに、より強く、よりたくましくなってプロの世界でも大きく成長する姿を、優しく見守っている。 取材・構成=菅原梨恵 写真=BBM 福井ブレイブボーイズ(※栗原陵矢の中学時代の所属チーム)の監督が私の親友だったのですが、陵矢のレベルならほかの高校にいくだろうなと思って特に声を掛けたりということはありませんでした。当時の春江工高は決して強いわけではなく、これからのチーム。私自身、監督就任3年目でしたし、来てくれる子たちで一生懸命やろうと思っていました。それでも、陵矢はこれから変わろうとしている春江工高に興味を持ってくれていたみたいです。
体験会(体験入部)に来たときの陵矢は線の細さが気になるところではあったのですが、それも入学するころには体が少し大きくなっていて。成長しつつあると感じられましたし、あとはやっぱり雰囲気ですよ。技術というよりも、ユニフォームの着こなしや、ミットや防具を着けたときの表情というか。「こういう選手って、ちょっといいよね」と思いました。
入ってすぐに正捕手になったのですが、それも主になっていた選手たちがポジションを空けたからなんです。「アイツに任せようじゃないか」と。慣れていない中でのマスクだったのでケガなんかもありましたし、本人もかなり無理していたところもあって、そこは私自身今でも考えるところではあるのですが、大変な中でもやっていけたのは彼の持っているものだったのでしょう。あとは、これからのチームだったので、みんなが彼を認めて、彼を受け入れるという状況があった。もし彼が強豪校と呼ばれる高校に行っていたら、1年生からマスクをかぶって試合に出るなんて、なかなかない。そう考えると、彼の成長物語はマンガみたいだな、なんて思ったりもします。
リーダーシップを持ってチームをまとめて、チームの“王様”だった陵矢ですが、1年の秋、崩れ落ちたことがありました・・・
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