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PACIFIC LEAGUE CHAMPION INTERVIEW 逆転Vを呼んだ“新鮮力”

オリックス・阿部翔太インタビュー 『ガッツしか勝たん!!』の真意 「結果は相手があってのもの。でも、心は自分でコントロールできる」

 

空前の混戦を制し、シーズン最終戦でつかんだ頂点は最大11.5ゲーム差を逆転してのリーグ連覇だった。あきらめない思いが結実した栄冠はチーム力を示すものだったが、それを支えたのは昨季の優勝の味を知らないナインばかり。筆頭が入団2年目ながら今年30歳を迎える遅咲きの右腕だ。44試合に登板してわずか3失点で防御率0.61。『ガッツしか勝たん!!』の思いを胸に腕を振った男の心意気──。意地と執念の“連覇”は、王者ではなく、挑戦者がつかんだ“初優勝”でもある。
取材・構成=鶴田成秀 写真=宮原和也

リリース後に蹴り上げる右足が象徴する豪快な投げっぷり。それは、これまで経験したいろんな思いが詰まったものだ


目指した場所


 優勝の歓喜の輪の中にいた背番号45。2年目の今季、大きな飛躍を遂げた右腕が、あらゆる場面で救援登板し、ブルペンに欠かせぬ存在となった。原動力は昨季の悔しさに尽きる。優勝に貢献できなかったふがいなさが、右腕をさらに強くさせ、目指していた場所にたどり着いた。

──2年目の今季は44試合登板とフル稼働も、昨季は4試合登板のみ。チームは連覇も阿部投手にとっては“初優勝”の思いも強いのではないですか。

阿部 本当にそのとおりで、僕自身は初優勝の気持ち。昨年はチームの一員というより、優勝を見ていた感覚で。テレビで一軍の試合を見ながら「すごいな」って思っていただけなんです。そこで思ったんですよ。ファンの方と同じだなって。

──とはいえ歓喜しているのは一、二軍でともに汗を流すチームメート。歓喜の輪は届く距離にありました。

阿部 届く距離にいる皆の中に入っていけなかったからこそ、何もしていない自分がふがいないなと思ったんです。だから「今年こそ」って。昨年は何もできず悔しい1年だったので「絶対に活躍する」という思いでやってきたし、優勝した今も、その思いは変わらない。その気持ちが今年の原動力です。

──では、具体的に必要と感じたこと、磨かないといけないと思った部分は。

阿部 プロは143試合ある。昨年は故障してしまったこともあって、それが社会人と一番違う大きなポイントだとあらためて思いました。だから、体をもう一回、しっかり鍛え直さないと戦えないなって。体のサイズアップではなくて、筋(肉)量を増やし、143試合を戦う中で持久力、耐久性も必要になる。本当に今までにないくらいトレーニングをしました。オフだけでなくて、シーズン中も継続して。途中でやめてしまうと、筋量も落ちてしまうし、持久力もつかないので。あとは、フォークとか変化球のコントロールには自信があったんですけど、ストレートの勢いがないと、変化球の精度も生きないなと思っていました。

──迎えた今季、初登板は4月。手応えをつかんだのは、4月27日の日本ハム戦(東京ドーム)と言っていましたね。

阿部 はい。その前から自分のピッチングができていたので、自信はついてきていたんですが、ノーアウト満塁でマウンドに上がって『ピンチで(無失点に)抑えた』ことで、より自信になりました。首脳陣の方へのアピールにもなったのかな、とも思ったので。ターニングポイントになった登板だったんです。

──同点の7回、無死満塁での救援登板。最初の打者・今川優馬選手に対して初球はフォークと冷静さも感じさせました。

阿部 相手もたぶん打ち気だったこともありますし。でも、それは(捕手の伏見寅威)寅威さんが、うまくリードしてくれたんです。初球のフォークで空振りを取れて1つストライクを取れたことで、僕自身もより冷静になれたし、あれは寅威さんのファインプレーだと思います。やっぱり、1つのストライク、1つのアウトを取るまで不安な部分がある。だからこそ、あの初球は大きかったと思います。

──その好救援が首脳陣へのアピールとなったのは、その後の登板数が物語りますが、イニングまたぎや登板イニングも含め、あらゆる状況で登板しました。

阿部 正直、何年もプロでやられている方だったら・・・

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