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よみがえる1970年代のプロ野球

1970年代再録インタビュー 懐かしの対談【セ・リーグ編】

 

ここからはバックナンバーから懐かしの対談をお届けしよう(一部抜粋)。
週刊ベースボール 別冊空風号 よみがえる1970年代のプロ野球 EXTRA(1) セ・リーグ編
2022年11月28日発売より


週刊ベースボール 再録インタビュー1
【スター対談】王貞治×鶴田浩二



大スターだった俳優、歌手の鶴田浩二さんは猛烈な王貞治のファン。対談当時の年齢は鶴田さんが46歳、王は30歳だった。プロ13年目のシーズンが始まったばかりのころに行われた対談だ。(1971年4月26日号)

スランプはある? ない?

鶴田 今シーズンは記録がいろいろとかかっているでしょう。10年連続ホームラン王とか。9年連続3割バッター。これをやったら川上(哲治)監督の記録を破るんだね。どうですか、記録男の王君としては。

 僕がこれだけは絶対やらなきゃいけないと思っているのは、今年ホームラン王を10年連続なんですよ。やっぱり一つの世界で一番トップへ立つということが9年で切れるより、いわゆる十年一昔と言ったり、何か話をする場合に10年と言ったら一つの区切りになると思うんです。だからとにかくこれだけは人に渡せないというものですね。やっぱり一番、それに自分の気持ちが執着しているみたいです。ほかのことは周りでワーワー言うから、そうだなんて言ったら、それが自分の談話みたいになってきますけれどね。

鶴田 ほかはそうすると、自分ではさほどでないわけか。三冠王とかホームラン60本なんていうの。

 そうです。新聞なんかに談話として出ていますけど、皆さんが思っているほど僕自身としては意識しませんですね。

鶴田 それはまあ、意識してできるものじゃないだろうしな。

 僕が一番、野球の世界で自分の目標にしているのは、ベーブ・ルースでも誰でもないんです。ルー・ゲーリッグという選手なんです。2130試合を全然休まずに出たという大選手ですよ。一年とか一回の試合にずば抜けたものを出すことももちろん大事だけれども、また一つの志した仕事でいかに長年──野球の場合でしたらケガもなく、常にトップの座を占めて少しでも長い間やるということが大事であるか。それを僕は一番志しているわけです。その秘訣(ひけつ)と言ったらおかしいかもしれないけれども、何か鶴田さんなりの苦労の話もあるだろうし、僕らとしたらそこに興味があるわけです。

鶴田 僕たちの世界は、今これをやったからこういう答えが出るという世界じゃないでしょう。何か戦いと言うならば、それは陰惨な戦いであってね。表面化しない戦いでしょう、つまり。ところが王君の世界は、今日その答えが出ちゃうわけじゃないですか。だからそれだけに僕はきついと思う。僕らワンカット間違えれば、この次のカットで取り返せばいいんだという――長い写真ですからね。一本の写真の中で1カ所2カ所間違えても、それを時間をかけて取り戻せばいいけれど。ただ長い間、見ていて僕は王君にスランプというのはないと思うんだよ。

 いや、それはやっぱり――まあ自分がスランプだと思っちゃってるのかもしれませんけれどね。

鶴田 うん、スランプはないと思っているんだ、僕。それだけ素質的に恵まれているし、体もまったく野球をするために生まれてきたような体だしさ。

 でも僕は人一倍、考えちゃうほうなんですよ。だから鶴田さんはないと言うけれども、スランプはやっぱりあるし、そうなるともう、どんどん、どんどん深みにはまっちゃうんです。その代わり抜ければまた、ばかみたいな力も出て来るということで結局、精神的なものが原因なんですね、スランプは。

鶴田 いよいよジャイアンツが7連覇を目指してスタートを切ったわけだけれどもね、自信はあるんでしょう、当然。

 そうですね・・・

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