勝負強い打撃を誇る阿部に続き、堅守の京田までチームを去る。かつての二遊間コンビ、その電撃トレードの狙いは何なのか。 トレードで移籍が決まった阿部[右]と京田。主力2人の放出でチーム内にも緊張が広がった
ディフェンス野球とチーム改革の表れ
相次いだトレード劇に
中日ファンだけでなく、多くのプロ野球ファンが驚いたはずだ。
阿部寿樹と
楽天・
涌井秀章投手のトレードが11月15日に決まると、その3日後の18日には
京田陽太と
DeNAの
砂田毅樹投手のトレードが発表された。先発を強化すべく涌井を、手薄な中継ぎ左腕を埋めるべく砂田を獲得したわけだが、それは阿部と京田を出しても実現させなければならなかったものだったのか。
チームの課題は言うまでもなく貧打線だ。今季の414得点は62本塁打と並んで12球団ワースト。その中でクリーンアップを務めた阿部の貢献度は大きかった。京田もこの2年は打撃での低迷が続いているものの、堅守でリーグ屈指の遊撃手。鍛え直せばと復活を期待するファンも多かったはず。主力野手2人を放出し、獲得したのが投手2人というところにファンのジレンマがある。今シーズンの完封負けは26試合。好機で凡打が続くシーンは定番だった。
優先すべきは打線の強化――しかし
立浪和義監督が推し進めるのは広いバンテリンドームでのディフェンス野球なのだ。涌井と砂田、ドラフト
1位で
仲地礼亜(沖縄大)を獲ったのも、さらに言えば昨年の
又吉克樹(
ソフトバンク移籍)のFA移籍に伴う人的補償で
岩嵜翔を指名したのも、その方針に沿ってのもの。
今季のドラフトでは育成を含めて二遊間の野手を5人獲得。ディフェンス野球の軸となるセンターラインへのこだわりが見えた。二遊間を守れる貴重な選手だった
三ツ俣大樹(
ヤクルト)を戦力外通告とし、阿部と京田はトレードで放出と二遊間の顔ぶれを一気に変えた。ルーキーたちですぐに彼らの穴が埋まるとは思えないが、将来を見据えた立浪監督の思い切ったテコ入れだろう。若返りを図るというよりも血の入れ替えだ。
暗黒期が続くチームにとって必要なのは「刺激」と「競争」。立浪監督が就任1年目で痛感したのは得点力不足以上に、選手たちに巣食うぬるま湯体質だったのではないか。刺激を与え、競争を促し、ぬるま湯体質を一掃するには、今回のトレードは十分なインパクト。第3弾、第4弾も考えられる。
楽天から涌井[右]、DeNAからは砂田を獲得。涌井は先発、砂田は中継ぎとして期待される