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球団レポート

巨人・開幕ダッシュ失敗の原因と巻き返しの手掛かり

 

5年ぶりのBクラスに終わった昨季の屈辱を晴らすべく「奪回」を掲げて2023年に臨んだ伝統球団が、スタートから出遅れ、開幕から1カ月半が経過しても5位に沈んでいる。巨大戦力を有しながら、なぜ下位に低迷しているのか。巻き返しの糸口はあるのか。3つのポイントから巨人の現在地を探っていく。
写真=BBM ※記録はすべて5月15日現在


【投手陣】昨季と同じ課題を抱えるリリーフ陣先発陣の立て直しで負の連鎖を断つ


 3年ぶりのリーグV奪回への最重要課題とされていたのが、投手陣の立て直しだった。だが、計算どおりには進んでいないのが現状だ。5月15日時点での巨人のチーム防御率は、12球団ワーストの4.20。同時点でセ・リーグ5位に沈む最大の原因となっている。

 チームが5年ぶりのBクラスとなる4位に終わった昨季も、チーム防御率は12球団ワーストの3.69、リリーフ防御率もリーグワーストの3.78。昨秋に就任し、再建を託された阿波野秀幸投手チーフコーチは“勝利の方程式”を固定できなかったことに着目し、「どうやって強いブルペンをつくっていくのかは大事。同じタイプの投手をブルペンに何人も置いておいても、そこまで代えるメリットがない。ラインアップをつくっていくことで交代のメリットも生まれる」と救援陣の整備を図ったが、今季も同じ悩みがチームを苦しめている。

 昨季37セーブを挙げて新人王に輝いた守護神・大勢につなぐ勝ちパターンが安定しない。それを印象づけたのはゴールデンウイーク最終日の5月7日の中日戦(バンテリン)。同点の8回に22歳の直江大輔、23歳の菊地大稀の若手中継ぎ右腕が四球などでピンチを招き、勝ち越しを許した。この中日3連戦はすべて8回に決勝点を献上し、8回の失点は実に6試合連続。今季のイニング別失点も最多の25を記録しており、ネット上や新聞紙面に“魔の8回”の文字が飛び交った。

 今季のセットアッパー候補として期待されていたのは、MLBメッツから獲得したヨアン・ロペスだった。WBCキューバ代表入りも辞退して加わった最速159キロ右腕だったが、開幕カードの登板から打ち込まれ、4月6日に二軍に降格。その後、国学院大出身のドラフト3位・田中千晴が二軍から昇格し、フォークを武器に好投を続けて「8回の男」に定着しかけたものの、その後は失点が続いて5月6日に登録抹消された。

 原辰徳監督はこのとき「継続して自分の役割を果たすのはプロの世界では大変なこと。そのためには本人も相当なるエネルギーを消費しないと。抑えた、抑えられなかった、打った、打てなかった、ということだけではなかなかこの世界はね。そういう意味ではいい経験ができたと思う」と、若き右腕の成長の糧となるよう願ったが、蓄積疲労や相手の研究網を潜り抜けるタフな中継ぎエースが、今のチームに求められている。

 チームはすでにリーグ最多となる17投手を救援で起用している。育成枠から開幕前に堀岡隼人田中豊樹を支配下に復帰させ、5月4日にも昨オフにDeNAから加入した三上朋也を昇格させるなど戦力の模索も続いているが、勝ちパターンの輪郭は見えてこない。

 希望の光はプロ入り8年目となる左腕の中川皓太だ。度重なる故障で昨季から一軍登板がなく、今季は育成からスタートしたが、4月末に1年5カ月ぶりの実戦復帰を果たした。本人も「体は大丈夫。いつ呼ばれてもいい準備をしたい」と順調な回復ぶりを示し、5月15日に松井颯とともに支配下登録。ブランクはあるものの、2019〜21年の3年間で計162試合に登板した経験豊富な左腕こそ、救世主となり得る存在だ。

 先発陣に目を向けても・・・

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