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オリックス・山本由伸が2年連続のノーヒットノーラン 信念を体現し続けて「ランナー出したあとの一発目、クイックに変わったときに──」

 

続けることの偉大さを記録で示す。9月9日のロッテ戦(ZOZOマリン)でオリックス山本由伸が昨年6月に続き、自身2度目のノーヒットノーランを達成。2年連続の“ノーノー”は、82年ぶりの快挙であり、2リーグ制となっては初めてのことだが、偉大な記録は、右腕が常に口にしてきた心に刻む思いを象徴するものでもある。
文=鶴田成秀 写真=川口洋邦

27個目のアウトを奪うと、祝福のウオーターシャワー。積み重ねの先に、いつも歓喜が待っている


求め続ける理想の投球


 女房役・若月健矢とこんなやりとりがあったという。「最近ずっと試合直前に『完全試合をしましょう』って毎回言うので。だから本人もしたいのかなって」。

 そんなエピソードがすんなり耳に入ってきたのは、初の沢村賞に輝いた2年前の2021年、山本由伸に『理想の投球』を聞いていたからだ。それも自身15連勝が始まる直前の5月、当時は3勝5敗と負けが先行していたときのこと。問いに対し、右腕は迷いなく答えた。

「毎回、勝つこと。毎回、完全試合をするのが究極の理想です」

 先発再転向した19年に掲げた理想の先発像は「負けない、打たれない、そして疲れない」。打たれなければ負けることはなく、球数も増えないから疲れない。続けるこの意味の大きさを肝に銘じてきた右腕だからこそ、目指すのは1度の勝利にとどまらなかった。だから、1週間の調整も抜かりはない。登板後に「また1週間、練習を頑張ります」と言うのは、もはや常套句(じょうとうく)になっていた。

 続ける快投。昨季も2年連続で投手4冠と沢村賞を手にし、昨年6月18日の西武戦(ベルーナ)ではノーヒットノーランも達成。それでも、シーズン後に口にしたのは変わらぬ思いだった。

「1試合、良いピッチングをするのではなく、安定して投げ続けれたのかなって。そこが今年(昨年)、良かったこと」

 信念は今季も体現する。成績は軒並みリーグトップを走り、迎えた9月9日のロッテ戦(ZOZOマリン)は序盤からストライク先行で球数を要することなくアウトを奪う。「ランナーを出していないのは分かっていました」と頭をよぎった完全試合は6回に先頭打者へストレートの四球を与えて途切れるも、ここからが安定感が光る右腕の真骨頂だった。

「ランナー出したあとの一発目、クイックに変わったときを、しっかり意識して」と、崩れることなく無安打投球を継続。8回には圧巻の3者連続奪三振とエンジン全開に。9回二死から死球を与えながらも最後まで安打を許すことはなかった。

 姿勢は崩さない。歓喜のウオーターシャワーを浴びた敵地・ZOZOマリンは昨年4月、ロッテ・佐々木朗希に完全試合を成し遂げられた場所。「ファンの方が一番悔しかったかもしれない。何とか達成できてよかった」とスタンドに頭を下げれば、気持ちはすでに次に向いていた。

「もっともっと頑張って、もっともっといいボールを投げれるようにしたい」

 2年連続のノーヒットノーラン達成は、1941年の黒鷲・亀田忠以来、82年ぶり。巨人沢村栄治を含めて3人目で2リーグ制では初のことだ。複数回の達成は史上10人目と“記録”のキーワードは“連続”だけに、2度目の“ノーノー”は右腕を象徴するものにほかならない。

■9月9日、対ロッテ(ZOZOマリン) スコアと打席結果&イニング別球数

※カッコは先発。△は左打ち

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