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楽天・安樂智大が自由契約 選手へのパワハラを球団が認定

 

後輩選手へのパワーハラスメント(パワハラ)行為は紛れもない事実だった。楽天は11月30日、記者会見を開いて安樂智大の自由契約を発表。緊急アンケートの調査、本人への聞き取りの結果から、厳重な処分を下した。
写真=BBM

球界に大きな衝撃を与えた安樂によるパワハラ騒動。来季は自由契約となり、このまま日本球界を去る可能性も……


後輩選手たちの告発


「球団としては見過ごすことのできない重大な事象ととらえ、本日、提出期限であります保留選手名簿への記載をしないという結論に至りました」

 11月30日、本拠地・楽天モバイルで行われた安樂智大のパワハラ疑惑に対する記者会見。楽天の森井誠之球団社長が緊張した面持ちで重い口を開き、安樂の自由契約を発表した。12月1日に公示される保留選手名簿へ記載しないということは、事実上の解雇。球団はパワハラの事実を認定し、最も重い処分を下したと言えるだろう。

 安樂の後輩選手に対するパワハラが表面化したのは、このオフの契約更改。被害にあった選手たちからの訴えによるものだった。球団は事実を確認すべく、すぐに選手、コーチ、スタッフら計137人に緊急アンケートを実施。回答率は92%だったが、およそ10人が被害にあったと訴え、さらに約40人がパワハラの事実を見たり、聞いたりしたことがあると回答した。並行して自宅待機を命じていた安樂にも聞き取り調査を行い、そこで出た結果は「これまで報道されていた事象は、ほぼ事実と判明した」(森井球団社長)というものだった。

 実際にどんなパワハラ行為が行われていたのか。アンケートで認定されたのは、ロッカールームで倒立をさせての下半身露出、食事の誘いを断った場合の深夜に及ぶしつこい迷惑電話、罰金と称した金銭の徴収、「アホ」「バカ」などの暴言や罵声、人格否定などだ。平手打ちなどの事実は否定したようだが、それ以外の行為については安樂自身もほぼ認めた。球団から自由契約を告げられると、安樂は「かしこまりました」と肩を落として答えたという。

「本当に申し訳ありません。被害者に謝罪したい」と安樂自身、反省の色が濃く、被害者への謝罪、また謝罪会見も球団に申し入れている。

安樂[右から2人目]にパワハラの意識はあったのか。周囲の眼にはどのように映っていたのか


再発防止に向けて


 安樂は今季で高卒9年目の27歳。済美高(愛媛)時代の2013年春のセンバツ準優勝投手であり、14年秋のドラフト1位で指名され楽天に入団した。今季は57試合に投げ、21年から3年連続で50試合以上に登板しているタフネス右腕。楽天にとっては大きな戦力を失うことになった。

 自由契約選手として公示されたということは、どの球団とも交渉OKということではある。他球団への移籍は可能性としてはゼロではないにしろ、おそらく獲得に乗り出す球団は皆無だろう。ただ、これで安樂のプロ野球人生が終わったわけではない。

「彼の将来をすべて否定するものではない。彼が今後、何かをしていくときに助けてほしいといった場合、前所属球団としてしっかりサポートしていきたい」と森井球団社長。来季の契約はしないという厳重処分を下したものの、それ以降については白紙だ。それでも「今ここで、“ゼロ”と発言できないけど、再契約の意思があるとは思ってほしくない」と強い口調で言い切った。

 森井球団社長は就任したばかりの今江敏晃監督についても触れ、「当然、一緒にやってきた仲間、ショックを受けているのは間違いない」とコメントした。

 チームの顔でもあり、エース格の田中将大は今回の騒動について、X(旧ツィッター)で次のように投稿し、謝罪した。

「ハラスメントは許されないことです。球団のみならず、自分もチームの年長者として、もっと後輩たちの様子に気を配り、気軽に相談され、問題があれば率先して注意すべきであった、意識が甘かったと反省しています」

 今後に向けて大切なのは再発防止となる。球団は定期的にアンケート調査を実施し、匿名可能な相談窓口も設置。専門家を招いてのパワハラ説明会なども検討していくことを予定している。
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